トランプ大統領が国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠に課した最大49%の「相互関税」は、議会の権限を越えるものであり、最高裁が近年重視する「重大問題ドクトリン」に明確に抵触すると指摘されている。

1977年に制定されたIEEPAは、外国の脅威に対応するために大統領に一定の経済措置を認める法律であり、もともとは敵国資産の凍結などに用いられてきた。だが、今回のように貿易赤字や友好国にまで広く関税を課す行為は、本来の目的を逸脱し、貿易や税に関する議会の権限(憲法第1条第8節)を侵害しているとされる。

最高裁は2022年の「ウエストバージニア対EPA」判決などで、経済・政治に大きな影響を与える政策には明確な議会の授権が必要だとする立場を示しており、トランプ氏の関税政策もこの基準に照らして違法とされる可能性がある。IEEPAの条文には関税に関する明示的な規定はなく、トランプ氏の行動は「非常時対応」ではなく「恒常的な通商政策の制定」に近い。

このような前例が容認されれば、今後どの大統領でも「緊急事態」として恣意的に政策を推し進める危険性がある。ゆえに、最終的には議会が通商政策の主導権を取り戻す必要があり、もしトランプ氏が拒否権を発動しても、最高裁が「重大問題ドクトリン」に基づいてその行為を制限することが、アメリカの三権分立を守る唯一の道であると結論づけている。

Q. すでに行政訴訟も起こっているが、どうなるのか?

トランプ大統領による中国への20%関税に対して、保守系団体NCLAが違法だとしてフロリダ連邦地裁に提訴した。根拠とされたIEEPAには関税の導入には明記されておらず、専門家らは憲法違反の可能性があると指摘している。