景気が良いか悪いかの判断は収入や株式投資などからの副収入を通じた所得の増分に影響を受けやすいですが、それ以上に周りの雰囲気に流されやすいものなのです。古い例ですが、バブル経済の80年代後半、給与や賞与が爆発的に増えたわけではなく、むしろ忙しいながらも残業手当があり、社費による飲食も割と緩めだったことが人々の雰囲気を前向きにし、一種の祭りのような状況を作り上げたことが盛り上がった最大の理由であり、根拠なき不動産価格や株価の上昇と未実現益の積み上げで泡を掴んだわけです。

北米ではそもそも景況感にやや疲れが出てきた中で今回、トランプショックで一気に背中を押しているというのが私の見立てです。この週末には全米50州で1300近いデモが開催されたと報じられています。ターゲットはトランプ氏とマスク氏。そのトランプ氏は相互関税は予定通り引き上げると述べているため、私は国民の不満は次のレベルである暴動になる可能性すら否定できないとみています。全米が荒れに荒れ、政権トップに危機感が募れば関税のフリーズや撤回というシナリオはあり得ると思いますが、すべてはトランプ氏個人の判断に委ねられます。

リーマンショックやコロナの際の市場の大暴落と違い、今回はトランプ氏が明白なる犯人であり、人為的であります。トランプ氏の主張する関税の壁を作ることでアメリカ国内に製造業が回帰し、国内生産が潤い、雇用も増えるというシナリオを論じる経済学者の話を私は聞いたことがありません。

パウエル議長は4日の段階ではまだ判断できないと述べています。個人的に考えるアプローチとしては物価上昇率から関税による恣意的な物価上昇率を補正し、調整後の数字がFRBが目指す2%に近づいているか計算するしかないと思います。各種関税はこれからようやく施行されるわけで統計値に出てくるには2-3か月先になります。FRBは市場の動向をみて予防的利下げをする可能性はありますが、本格的な判断は6月とか7月にならないとできないとみています。