”Fast and Furious(F&F)”は、米国からメキシコの麻薬カルテルへの銃の流れを追跡することを目的としていたが、捜査官は数百丁の銃器を見失った。
紛失した銃のうち2丁は、2010年12月にアメリカ南部国境付近で起きた国境警備隊のブライアン・A・テリー捜査官殺害の現場で回収された。
とのことである。
他の記事※14)にも目を通すと、F&Fを通じてどうやら2,000丁もの銃器がメキシコ麻薬組織の手に渡ったようだ。
フォーブス誌※15)は経緯をより詳しく説明している:
F&Fは、メキシコの麻薬カルテルとつながりがあると思われるアリゾナ州の人々に数千丁のセミオートマチック銃器が販売されていることを、メキシコ当局が知らされていないほど隠蔽された作戦だった。ATF(アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局)の内部告発者によると、2009年、アメリカ政府は銃砲店の店主に対し、犯罪者と疑われる人物に銃器を売ることで法を犯すよう指示を出し始め、銃がアメリカとメキシコの国境を越え、メキシコの麻薬密売組織の手に渡るのを 「歩かせる」ように命じた。
なんとも信じ難い話である。
メキシコ政府は銃器の密輸問題について、米国側に具体的なアクションを求めるべく、過去に訴訟を起こしている事実も確認できた※16)。確かに、メキシコだけでなく、米国自身も大きな問題を内包していると感じる次第である。
米国政府説明責任局(GAO)の報告※17)によると、2014年から2018年までにメキシコで回収され、追跡のために提出された銃器の70%は米国製だった。また、メキシコ政府は毎年20万丁の銃器が米国から密輸されていると推定しているようだ。
ここまでの規模感になると、一大ビジネスである。全米ライフル協会(NRA)が本件をどこまで把握しているかは不明だが、取締りを強化すれば、その分の売上は消失する可能性が高いであろう。「全米最強のロビイスト」と称されるNRAは先の大統領選でもトランプ氏を支持していた※18)が、売上と正義の選択を強いられた場合、どちらを取るのか。トランプ政権がどこまで健全な米国を取り戻すことができるのか、難しい舵取りを迫られることになるであろう。
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