テキスト・動画・画像などのコンテンツを手軽に発信できるプラットフォーム「note」が、コンテンツをAI事業者が学習データとして利用する際に、そのクリエイターに対価を支払う仕組みの検証を開始した。このような取り組みを始めた理由は何か。また、どのようなかたちで個々のクリエイターに収益が還元されるのか。note運営元への取材を交えて追ってみたい。

 誰でも簡単にコンテンツを発信できるとして利用者が増えているnote。ユーザの利便性向上のためにAI導入に積極的なことでも知られる。2月には、全クリエイターが無料で利用できる、グーグルのAIモデル「Gemini」を活用したAIアシスタントの提供を開始。noteの記事編集画面からフリーフォーマットでAIに質問できるようになった。3月にはAIアシスタントをアップデートし、クリエイターはアイデア出しや文章作成を会話形式で実行できるように。例えば、記事の冒頭をどのような書き出しにすればよいかや、キャッチーな文面にするにはどうすればよいのかを質問・相談し、提案を受けながら記事を執筆することができるという。また、多くの人が興味を持ちそうな切り口にする案を相談するようなことも可能だという。

 noteの編集画面上でAIとの相談内容をそのまま反映しながら文章を編集・改善できる機能の提供も検討中。noteは「一人ひとりの専属編集者のように寄り添える」ことを目指しているとしている。

クリエイターにとって適切な収入を得られる仕組み

 そのnoteは、前述のとおりAI事業者がnoteのコンテンツをAI学習する際に、クリエイターに対価が還元される実証実験を開始。参加を希望したクリエイターのテキストコンテンツのみを対象とし、参加クリエイターのコンテンツがAI事業者の学習候補となる。一定の基準に基づいて対価を決定し、参加したクリエイターに還元する。同社CEOの加藤貞顕氏は以下のコメントを発表している。

「AIは創作のために非常に便利なツールですが、まださまざまな課題があります。今回の試みでは、そこの解決を目指しつつ、クリエイターのみなさんの新しい収益源をつくることにもチャレンジしたいと考えています。今後も、さまざまな試みをやっていきたいと思いますので、まずはお気軽に参加いただければと思います」

 このような取り組みを始める理由について、noteはBUSINESS JOURNALの取材に対し、次のように説明する。

「生成AIが進化するためには、多くの学習データが必要です。しかし現在、AIが学習するコンテンツなどのデータについては、作者からの許諾が十分に得られていなかったり、対価が適切に支払われていないという課題があります。noteは、クリエイターの権利を守り、創作活動がより持続可能になるよう支援するとともに、クリエイターにとって適切な収入を得られる仕組みをつくることを目指して、この実証実験を行います」