地球外生命体の存在を探る試みは、人類の長年のロマンであり続けている。しかし、その探求が思わぬ壁にぶつかっているかもしれない。急速に進化するドローン技術が、UFO(未確認飛行物体)、あるいは近年使われる「UAP(未確認異常現象)」の特定を困難にし、真実の発見を妨げている可能性があるというのだ。

 この警鐘を鳴らすのは、かつて米国防総省でUAPの調査を行う「先端航空宇宙脅威特定計画(AATIP)」の責任者を務めたルイス・エリゾンド氏だ。彼は、現代のドローン(無人航空機)があまりにも高性能化し、軍関係者でさえUFO/UAPと見間違えるほどになっていると指摘する。この混乱は、二つの大きな問題を生む可能性がある。

 一つは、もし本物の地球外からの飛来物があったとしても、それを高性能なドローンと誤認してしまうリスク。もう一つは、逆に敵対国や組織による攻撃用ドローンを、比較的無害なUAPとして見過ごしてしまう危険性だ。

見分けがつかない? ドローンとUAPの境界線

 エリゾンド氏は、議会との非公開会合でもドローンの能力について説明し、その識別がいかに難しくなっているかを訴えている。「典型的な、あるいは古典的なUAPタイプの侵入や特徴と、ドローンのそれとを区別するのは、ますます困難になっている」と彼は語る。その背景には、ドローン技術の驚異的な進歩がある。

ドローン技術の進化が“UFO探求の壁”に? 専門家が鳴らす警鐘
(画像=ルイス・エリゾンド氏(出典:YouTube / Max Moszkowicz、CC BY 3.0)、『TOCANA』より 引用)

 かつては夢物語だった長時間の飛行は、最先端のバッテリー技術によって可能になった。炭素繊維(カーボンファイバー)のような軽量素材は、以前より手に入りやすく安価になった。モーター技術の革新はシステムの消耗を減らし、より高性能な機体開発を後押ししている。

「2017年には夢でしかなかったことが、今やドローンで可能になっている」とエリゾンド氏は指摘する。ウクライナの戦場ではドローンによる死傷者が砲撃による死傷者を上回るほど、その脅威は現実のものとなっている。「これは戦争のあり方を変えている。9.11以降、我々が学んでいないことがあるとすれば、それはこれらの新興技術を真剣に受け止めていないことだ」と彼は警告する。