寒い冬の朝、外に出た瞬間に「ハックション!」と大きなくしゃみが出たことはありませんか?
一方で、ホコリっぽい部屋に入ったときや、風邪をひいたときには「ゴホゴホ」と咳が止まらなくなることもあります。
どちらも体が異物を排出しようとする反応ですが、なぜ鼻から出る場合と口から出る場合があるのでしょうか?
くしゃみと咳は、どちらも呼吸器を守るための防御システムです。
しかし、その仕組みや役割は驚くほど異なっています。
私たちは無意識のうちにこれらの反応を起こしていますが、実際には体の中で精巧なメカニズムが働いているのです。
咳とくしゃみの違いを知ることで、自分の体がどのように外敵と戦っているのかがわかるかもしれません。
では、まずはくしゃみの仕組みから見ていきましょう。
目次
- 「瞬発的な防御反応」と「持続的な防御反応」
- 咳は我慢できるのに、くしゃみは難しい理由
「瞬発的な防御反応」と「持続的な防御反応」
くしゃみと咳は似ていいるようで、大きく異なる機能を持っています。
似ているのはどちらも身体に入り込んだ異物を、肺から放出する空気の力で押し出そうとする点です。
しかし、それ以外ではくしゃみと咳はかなり違った目的を持つのです。
くしゃみは、鼻の中に異物が入り込んだときに発動する瞬発的な防御システムです。
花粉やホコリ、煙、さらには急な温度変化までもがくしゃみを引き起こす原因になります。
鼻の粘膜には「機械受容器(mechanoreceptor)」と呼ばれるセンサーがあり、これが異物を感知すると、三叉神経(trigeminal nerve)を通じて脳の延髄にある「くしゃみ中枢」に信号を送ります。
この信号を受け取った脳は、一気に肺へ大量の空気を吸い込み、声門(glottis)を閉じることで圧力を高め、一瞬にして爆発的に開放します。
このとき、空気は時速160キロ以上の勢いで鼻から噴き出し、異物を追い出します。