であれば、目に見える数字に現れない従業員の教育、中長期の研究開発、工場などの生産設備はない方が、バランスシートがきれいになります。海外に製造が移ったのもそれが大きい。ですが中国などに製造拠点を移したために国内産業が空洞化しました。

従業員や設備投資、開発に投資しないから競争力は下がる。するとロビイストや弁護士を雇って議会や役所に介入して自社に有利な仕組みをつくる。その典型例がボーイングです。

ボーイングだけではなく、多くの軍事企業も同様です。ですから大手からは開発能力やシステム統合能力が下がっています。だから装甲車両でもほとんど外国企業が開発した物を導入しています。だから国防総省の開発プログラムのコストが高騰し、期間も遅延しているわけです。ここを理解していません。

「米国の船舶生産力はすでに中国に500倍以上の差をつけられている」も意味がない話です。既に40年以上前から米国ではほとんど軍艦以外の造船は消えています。軍民作っている中国と500倍の差があると前提抜きで比較するのは大変おろかです。

その一方で軍艦の開発や製造能力が下がっています。従業員の教育をせず、設備投資をせず、何でも外注に回せばそうなるのは当然です。

米国が製造業の復権を実現するのであれば、現在の短期利益至上主義の強欲資本主義を見直す必要があるわけです。ですが、それは大変難しいでしょう。

空母 エイブラハム・リンカーン Wikipediaより

Japan in Depthに以下の記事を寄稿しました。 高コスト・低品質な国産戦闘服:自衛隊装備調達の問題と改革の必要性 石破首相のC-17導入発言の真意

ES&D誌に寄稿しました。 Japan orders 17 Boeing CH-47 Block II Chinook helicopters

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