仮設機材の販売・レンタルを中心とした事業で業界をリードしてきた株式会社タカミヤ。同社が2023年に発表した新ビジネスモデル「タカミヤプラットフォーム」は、建設業界のコスト削減を実現する革新的なプラットフォームだ。
建設業界ではこれまでDXの推進が困難な状況が続いてきた。主な要因として、電話やFAXといったアナログな手法が根強く残り、IT活用に消極的な傾向がある。また、デジタルツールを扱える人材の不足や、厳格な法規制・安全基準への対応など、多くの課題が存在する。
このような状況を打開すべく、同社は「タカミヤプラットフォーム」に大規模な投資を実施。建設業界の課題解決を目指し、建設業の「BtoBプラットフォーム化」を推進している。今回は、同社の代表取締役社長である髙宮一雅氏に、DXの具体的な取り組みや今後の展望について話を聞いた。

ーー「タカミヤプラットフォーム」 はどのような着想でスタートしたのでしょうか?
当社はこれまで、足場のレンタル事業を中心に展開してきました。しかし、事業の成長性と優秀な人材の確保を考慮した結果、変革の必要性を強く感じました。そこで事業転換を進めるにあたり、ITとDXを活用することで非効率な業務を改善し、フロー型からストック型ビジネスへの転換を実現することを決めたのです。

この取り組みから生まれたのが、タカミヤプラットフォームです。このシステムの一つ「OPE-MANE(オペマネ)」により、お客様が購入したIq System(タカミヤ独自の次世代型足場)を、全国の機材拠点で保管・管理、ATMでの現金取引のような安心感で製品の出し入れができるようになりました。

従来必要だった保管場所の確保や人員配置が不要となり、すべての管理を当社に一任いただけます。これにより、ユーザーは浮いた人員を別の業務に充てることで、より効率的な人材配置が可能となり建設業界の人手不足解消につながります。また、必要な時に必要な足場機材を引き出すことができ、レンタル料や保管場所のコストを大幅に削減できます。足場のデジタルマーケット「Iq-Bid(アイキュービッド)」を通じて、不要となった機材を換金できるシステムも用意しています。
――システム構築にあたって、苦労した点を教えてください。
安全性の可視化が最大の課題でした。業界には、足場を5〜10年使用した際に強度が認定基準を満たしているかを示すデータは存在しませんでした。そのため、足場が崩壊しても、強度の確認を行わずに「設計ミス」として処理してしまう慣習が続いていたのです。
この課題を解決するため、数億円を投じて試験機を導入し、足場の強度を客観的データと科学的根拠にもとづいて数値化しています。これにより、認定基準を常に上回る状態を維持し、基準値を下回った製品は直ちに廃棄または改修することで、お客様にたしかな安全性を提供しています。
さらに、返却時には映像記録と重量データを記録し、お客様が返却製品の再製品化までの全工程をモニタリングできる仕組みを整えました。従来発生していた数量や品質の食い違いを解消しています。

――革新的な仕組みで、業界の慣習を変えることにもつながりそうですね。
そうですね。建設業界では現場からの発注が今でも電話とFAXが主流ですが、私たちはこの慣習を改革するため、すべての受注をネット経由に一本化を目指しています。具体的には、Webオーダーシステム「OPERA」を導入し、受発注から配送車両の手配まで、24時間365日オンラインで注文できる体制を整えました。
これにより、電話対応の人員削減とFAX注文の減少よるペーパーレス化を実現し、建設業界各社の業務効率を大幅に向上させています。さらに、従来の非効率な発注方法で生じていたトラックの待機時間の問題も改善しています。
また、2024年問題によりトラック確保が困難な状況下で、私たちは物流部門を子会社化して独自の展開を進めています。M&Aを通じて必要な車両を確保し、Amazonのような効率的な物流システムの構築を目指しています。
私たちは業界のリーダーとして、規制改革を含めた新たな業界基準の確立に取り組んでいます。このプラットフォームを通じて顧客に具体的なメリットを提供し、参画を促すことで、業界全体のDXを推進していく考えです。