少し前、X(旧Twitter)上に、ユニクロの値下げ販売コーナーにマスタードやピンクの衣類が数多く陳列されているという情報がポストされ、話題になっていた。ユニクロといえば、ベーシックなデザインのアイテムをメインとし、幅広い年代から愛用されている日本が誇る世界的ファストファッションブランド。そんなユニクロの定番商品やイチ押し商品は、カラバリ(カラーバリエーション)の多さでも知られている。ホワイト、ブラック、ベージュ、グレー、ネイビー、ブラウンといったシックな色はもちろん、レッド、ブルー、イエロー、グリーン、オレンジといったビビッドな色や、ピンクやパープルといった着る人を選びそうな色も揃えており、幅広いラインアップとなっているのである。
しかし、その多色展開の豊富さが仇となり、売れ残りやすい色があるということなのだろうか。ユニクロに「ユニクロではカラーがピンクとマスタードの衣類は売れ残る傾向があるものなのか」「逆に、よく売れるカラーというのはあるものなのか?」と質問したところ、次のような回答を得られた。
「シーズンや商品によって売れ筋が変わってきますので、特にピンクとマスタードが売れ残る傾向にあるということはありません。よく売れるカラーに関しても商品ごとに異なりますが、絶対量としては白や黒などのベーシックなカラーが売れる傾向にあります。繰り返しになりますが、その年のトレンドカラー、素材と色の組み合わせなどによって売れ行きにも差が出てきますので、毎年特定の色が売れ残るという傾向はございません」(ユニクロ広報)
この回答を踏まえ、10年以上のファッションライター経験を持つコラムニスト・堺屋大地氏に解説してもらう。
姉妹ブランド『GU』の影響も関係あり?
「ユニクロ広報の回答を前提として、さらに詳しく解説させていただきます。たしかにその年によってトレンドの色は変わりますし、どういった商品で使われているかによってもカラーごとの売れ行きは変わってきます。ですからなかには、ピンクやマスタードがよく売れる年があったり、よく売れるアイテムもあったりするはずです。
ただ、ユニクロ広報が『絶対量としては白や黒などのベーシックなカラーが売れる傾向』と言っていますので、それはつまり定番カラーに比べれば、相対的にピンクやマスタードが売り場ではけにくいということでもあるでしょう。
そもそも、同じ商品のカラバリでもすべての色が均等に生産されているわけではなく、定番色は大量に生産される反面、着る人を選ぶような色は生産数を抑えるもの。にもかかわらず売れ残るということは、そのカラーはよっぽど売れていないということが推察できます」(堺屋氏)
売れる色・売れない色はほかのアパレルブランドにも通ずることなのだろうか。
「ブランドのイメージや顧客層によって、ピンクやマスタードといった色が鉄板の売れ筋アイテムというブランドもあるので、一概には言えません。ですがユニクロのように老若男女をターゲットにしており、国内だけで何百店舗も展開している巨大チェーンのブランド全体で考えれば、ホワイト、ブラックなどのモノトーンの色が売れやすく、レッドやピンクやイエローやオレンジといった派手な印象のある色が、比較的に売れにくいという傾向はあるでしょう」
ユニクロの場合は姉妹ブランドとも言える『GU(ジーユー)』の存在も関係してくるという。
「ユニクロは若者から中高年まで愛用されるブランドですが、ファーストリテイリングにはGUもあり、ユニクロとの差別化を図っています。GUはユニクロより全体的に低価格帯の商品を揃えており、デザインもより世界的なトレンドを意識したアイテムが多いため、比較的に低年齢層をターゲットにしたブランドになっています。ちなみにファストファッションの雄として知られるユニクロですが、近年はユニクロの価格設定を高く感じてなかなか手が出せないという若者も多いのです。
そういった背景からファーストリテイリング内の顧客層で言うと、ファッション感度が高くピンクやマスタードも好んだり着こなしたりできる10代・20代の若者は、GUに流れている傾向があります。そのため、ユニクロでは若者やファッション玄人でないと似合わなそうな派手な印象の色が、売れ残りやすくなっているということもあるかもしれません」(同)