「銀行の投資信託は損しやすい」、これは金融庁が2019年に発表したデータでも明らかだ。銀行の投資信託は相対的「コストが高い」、「リスクのバラつきが大きい」、「リターンが読みにくい」といった特徴がある。なぜ同じ投資信託でも金融機関によって運用損益に差が出るのだろうか。

投資信託の顧客は46%が損をしている

金融庁は各金融機関が「顧客本位の業務運営に関する原則」に沿って営業をしているか実態調査を行った。その報告書の中で注目されたのは「投資信託の運用損益別顧客比率」である。これは、数値を公表している96社において投資信託の顧客がどの程度利益を上げているかを示すものだ(基準日は2018年3月末)。

投資信託の運用損益率は「プラスマイナス10%以内」の顧客が最も多い

投資信託の運用損益別顧客比率によると、46%の顧客の運用損益がマイナスになっている実態が明らかになった。つまり半分は利益を出せていないのである。なかでも運用損益率が「-10%以上0%未満」の層が31.8%と最多だ。次いで多いのが「0%以上+10%未満」で、投資信託においては多くの顧客が「良くてトントンもしくはちょっとの損」という運用結果にとどまっていることが分かる。年金不安から投資信託への期待が高まっているが、買えば安泰というわけではなさそうだ。

銀行はネット証券よりも「投資信託で儲ける顧客」が少ない

業態別の運用損益別顧客比率を見ると、運用益がプラスの顧客比率が最も高いのは、直販を行っている独立系の投信会社だ。次いでネット証券、主要銀行、地方銀行・信金・信組、対面型証券会社と続く。利益を上げている顧客の比率は、ネット証券が61%なのに対し、地方銀行は53%にとどまる。主要銀行でも59%とネット証券には及ばない。これが「銀行で投資信託を買うと損をする」と言われるゆえんだが、同じ投資信託を運用するのに損益に差が出てしまうのはなぜだろうか。

銀行の投資信託はコストに対するリターンが低い

まず銀行の投資信託の特性として、手数料が高い割には利益が少ないという実態がある。

銀行における投資信託の手数料はネット証券より高め

銀行は窓口の人件費や店舗の維持費などのコストが発生するため、販売手数料の高い投資信託を顧客に勧める傾向がある。同じ投資信託でも銀行とネット証券では手数料が違うということも珍しくない。

「大和ストックインデックス225ファンド」という日経平均に連動するスタンダードなインデックスファンドを例に挙げよう。このファンドをゆうちょ銀行で買うと販売手数料が税込2.16%かかるのに対し、SBI証券のインターネットコースであれば税込1.08%で購入できる。販売手数料と信託報酬の合計値は、ネット証券であれば1%~1.5%程度だが、銀行では2%が当たり前の世界である。

投資信託のリターンは販売会社によって大きく異なる

手数料が高くてもそれだけのリターンが見込めれば問題ない。しかし、ネット証券は10%~15%のリターンが見込めるのに対し、銀行では3%~7%が多く、高くても12%ほどしかない(預り残高上位20銘柄の加重平均)。つまり主要銀行や地方銀行の投資信託は「コストが高い割にはリターンが得られない」といえる。コストが高いと運用益を得にくいとも考えられるだろう。

銀行の投資信託はリスクに対するリターンも小さい

リスクを取るほどリターンがあるのが理想だが、銀行の投資信託の運用結果は安定しない傾向にある。

「銀行=低リスク」のイメージは間違い

銀行は安全なイメージがあるが、実際には取扱商品にけっこうな高リスク商品が含まれる。リスクはリターンのブレを表す「標準偏差」として数値化される。銀行における投資信託のリターンの標準偏差は9%~18%と、低リスク商品から高リスク商品まで幅広い。一方でリターンは3~7%に集中している。リスクはバラバラなのにリターンが低めということは、ハイリスク・ローリターンな運用商品に当たる可能性が比較的高いことを意味する。

銀行の投資信託はシャープレシオのブレ幅が大きい

リスクに対するリターンを測った数値を「シャープレシオ」という。シャープレシオが高いファンドはそれだけ効率的な運用ができていることを示す。したがってシャープレシオの高い投資信託を多く取り扱っている販売会社は顧客の運用損益率も良好だ。銀行は幅広いリスクの商品を扱っているが総じてリターンは低めで、シャープレシオのブレ幅が大きい。効率運用と非効率運用が混合しているのだ。

あくまでも傾向の問題なので、銀行で投資信託を買えば必ず損をして、ネット証券で買えば儲けられるという話ではない。手数料水準と取扱投資信託の特徴を把握した上で、メリットがあると判断できるのであれば銀行でもいいだろう。

銀行より対面型の証券会社のほうが高コストでリターンのブレが大きい傾向

金融庁の報告書を見ると、銀行よりも対面型の証券会社のほうがより高コストでシャープレシオのブレ幅が大きいことに気付く。もちろん、それに見合うコンサルティングが期待できるのであれば検討してもいいだろう。

投資信託の運用損益率が銀行より高い販売会社の共通点

直販で投資信託を販売している投信会社は顧客の約9割が運用益を上げているという驚異的な数字がある。ネット証券と独立系ファイナンシャル・アドバイザーの顧客が次いで6割台となっている。これら運用損益率0%以上の顧客割合が高い金融事業者のスタイルとして共通しているのが、「積立投資の効果を重視」した姿勢だ。

投資信託の販売会社によっては、口座開設年別に運用損益率を公表している。口座開設から時間が経っているほど利益が出ている顧客割合が高いことから、長期保有の優位性が見て取れる。「積立」「長期」「低コスト」は投資信託を選ぶ際の目安になりそうだ。

文・篠田わかな(フリーライター、ファイナンシャル・プランナー)

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