ハマスの大規模なテロを受け、欧米諸国ではパレスチナ支援の停止を求める声が出てきている。欧州連合(EU)の欧州員会は、パレスチナ援助の見直しに取り組み出している。UNRWAに1953年以来、積極的に支援してきた日本政府に対しても、「日本のパレスチナ人への支援金はハマスのテロを助けている」として、UNRWAへの支援を停止すべきだという声が出ている。日本はUNRWAに対し3320万米ドルを支援し、パレスチナ難民の教育、医療などを支援してきた。日本は2022年時点でUNRWAへの支援では6番目に多い拠出国だ。
それでは国際社会から難民救済資金を得たパレスチナ自治政府はそれでパレスチナ人の生活向上、教育、国民経済の発展に投資しただろうか。現実は、ハマスはそれらの資金で武器を購入し、イスラエルへ侵入するためにトンネルを建設してきた。一方、アッバス議長が率いるパレスチナ自治政府には腐敗、汚職の噂が絶えない、といった具合だ。
一方、アラブ・イスラム教国はパレスチナ難民問題でイスラエルを批判するが、それでは同じイスラム教の兄弟パレスチナ難民を収容してきただろうか。イスラエル・ガザ紛争でも明らかだが、例えば、エジプトは病人、負傷者以外、ガザから逃げてきたパレスチナ難民を引き受けていない。イスラエル軍のガザ空爆を批判するが、彼らはパレスチナ難民を収容していないのだ。
さまざまな理由が考えられる。先ず、経済的理由だろう。ハマスなどのイスラム過激派テロリストが難民に交じって入ってくることを警戒することもあるだろう。普段は「われわれは兄弟だ」といいながら、戦争から避難する兄弟を収容していないことは事実だ。
多くのアラブ諸国はパレスチナ問題をイスラエル批判のために政治利用してきただけではなかったか。そのアラブ諸国はイスラエル軍のハマス攻撃を人道的犯罪として批判しながら、救済を必要とするパレスチナ人に対しては国境を閉じているわけだ。これは単に偽善といって済ませる問題ではない。
以上、難民問題に絞って、イスラエルとガザ紛争を見てみた。他の問題も関わってくるから、中東の問題を「難民」からだけで論じることは出来ないが、中東問題で看過されている「ユダヤ難民」問題についても公正に取り扱う必要があるだろう。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年12月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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