つまり大陸間弾道ミサイルは必要がなくなるのである。

北朝鮮の原潜の実態と課題

北朝鮮の国営メディアは、金正恩総書記が、原子力潜水艦の建造を視察したと伝えた。北朝鮮の「国防5か年計画」の最終年が今年であり、原子力潜水艦開発の進捗を世界に発信する狙いがあったと見られている。

韓国メディアのKOREA WAVEによれば、公表された原子力潜水艦は排水量6000~7000トン級と見られる。潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)と潜水艦発射巡航ミサイル(SLCM)を同時に各々最大10発程度搭載できると目されている。これは相当な脅威といって良い。

ソ連(現ロシア)が開発した舶用小型加圧型軽水炉OK-150のレイアウト1:原子炉圧力容器(直径約1.5m、高さ約3m)、2:蒸気発生器Nuclear Naval Propulsion

ただし、乗り越えなければならない開発課題はいくつかあり、それぞれ相当に壁が高い。それは例えば次の2点である。

小型の加圧型軽水炉の開発 高濃縮ウラン(20%)燃料の開発

小型加圧式軽水炉——この小型炉の心臓部である炉心(上図の1)の大きさは縦横高さが2m以内に収まる、まさにテーブルトップといってもよいコンパクトなものである。その周辺の蒸気発生器をなど様々な複雑な機器を含めても3方各10m以内に納めなければならない。これは普通の発電用の原子炉に比べればとてつもなくコンパクトで精緻な構造になっている。

北朝鮮の保有する原子炉は黒鉛減速型のいわばゆるい構造のものであり、加圧型軽水炉のような各部がタイトな原子炉を保有していないし、もちろん建造したこともない。

高濃縮ウラン——濃縮度20%程度のウラン燃料を製造しなければならないが、核弾頭用の90%を超える高濃縮ウランの製造技術は手にしているので、濃縮度そのものはさして問題ではないかもしれない。問題はそのような原子炉用燃料を製造して実際に期待された燃焼性能を発揮するかどうかを確認する必要がある。