愛車を「自分仕様」にしたいと考えるオーナーは多く、現在では新車メーカー側でもエアロパーツやアルミホイールなどのオプションを豊富に用意しています。
一方で、以前からカスタムを愛好する人たちのなかには「鬼キャン」や「フルスモーク」など、一般的な感覚からは理解されにくい改造を施す人もいます。
とりわけ90年代から2000年代初頭にかけては、「VIPカー」と呼ばれるジャンルが多く見られました。これは高級車をベースに、低い車高や厳ついエアロパーツ、大きなホイールなどで存在感を主張するカスタムです。
実際のところ、VIPカーのオーナーは何に惹かれて高級車を改造していたのでしょうか。今回はかつてVIPカーに乗っていた人たちの話を聞きながら、当時の車事情について振り返ってみます。
目次
「進化する国産車」に自身を重ね…
普通じゃないオーラを出したくて
「進化する国産車」に自身を重ね…

地を這うVIPカーを見て多くの人が感じるのは、「なぜ高級車をわざわざ乗りづらそうにするのだろう」という疑問かもしれません。この点について、かつてクラウンマジェスタやセルシオをカスタムしていた男性は次のように話します。
「当時は日本車メーカーも元気で、新しい車種が出るたび『すげぇ進化したな』っていう感覚があったんですよ。クラウンの上にセルシオが出てきたときは、『こんな上の世界があるのか』って思わされましたし。
それこそ、もう少しすればベンツのSクラスとも張り合えるんじゃないか、みたいな期待感がありました。
そういう空気感もあって、高級車は成功者の象徴というか、『せっかく生まれてきたからには金を稼いでいい車に乗ってやろう』という気持ちがありましたね。
改造するのも、その延長だったんだと思いますよ。自分の車が一番、特別なんだって。どれだけ高い車を買っても、純正じゃカタにハマったままですから、物足りなかったんですよね。
それでわざわざ、どんどん乗りにくい車にしていくわけですけど、逆にそれがシブいというか。偉そうな人が乗るような車をあえて不便に、自分の好きに弄るのが格好いいって価値観でしたね。
今はもう歳が歳ですし、気を使う車には乗りたくないので、ノーマルのままヴェルファイアに乗っています。中途半端にカスタム感を出すのもイヤなので、オプションのエアロとかは一切装着せず、大人しく乗っていますよ」(50代男性)
このように、当時の日本車に対する期待感と、自分自身の「成り上がってやろう」という向上心が、高級車のカスタムを加速させた面はあるのかもしれません。
普通じゃないオーラを出したくて

VIPカーに共通するポイントとして、車高調整式サスペンションなどを使った「シャコタン」が挙げられます。これにより、ほとんど地面スレスレになっているVIPカーも見かけますが、一体そこにはどんな意味があるのでしょう。
15年ほど前までVIPカーを6台乗り継いだという男性に聞くと……。
「車高を下げて何になるのか、今聞かれても困るんですけど、まぁやっぱり弄っているのが一目でわかるじゃないですか。
いかに厳つくするかが勝負、みたいなところがあったので、普通じゃないオーラをまず出さないと。車を買ったらまず車高調とアルミ(ホイール)を入れて、スモーク(フィルム)を貼って。VIP系は6台乗りましたけど、その辺は全部買ってすぐやりましたね。
ただ、地面スレスレまで下げる方が格好いいという風潮もありましたけど、自分は走れなくなるのはダサいと思っていて。ベタ下げはしていなかったですね。
なので傍から見ると全部一緒に見えるかもしれないですけど、自分らのなかではそれぞれコダワリがあるんですよね」(40代男性)
通常、スポーツ系の車種においては、車高を下げることによって安定性の向上といった効果が期待されます。一方で、VIPカーにおいては「普通との違い」を演出するための必須ポイントがシャコタンだったのかもしれません。