実はカタバミには、通常の緑の葉をもつ個体だけでなく、真っ赤な葉をもつ個体がおり、種内に葉色の変異があることが知られていました。

また赤葉のカタバミは、季節によって緑から赤に変色する紅葉とは違って、生まれたときから赤いままです。
つまり、カタバミの葉色の違いは遺伝子で決まっている遺伝的変異の結果といえます。
そしてチームは以前から、赤葉のカタバミが都市部に多いことに気づいており、これはヒートアイランドに対する適応進化かもしれないと考えていました。
「カタバミは本当に都会の暑さによって赤く進化したのか?」
チームはその真偽を確かめることにしました。
カタバミは赤色に進化して「高温耐性」を手に入れていた!
チームが東京都市圏の26地点を調査したところ、芝生や農地などの緑地に比べて、都市部ほど赤葉のカタバミが多くなる明確な傾向が見つかりました。
しかも緑葉と赤葉の変化は急激であり、公園の芝生と住宅街を比べると、たった数十メートルしか離れていないのに、葉の色が大きく変わっていたのです。

続いて、この「緑地は緑葉」「都会は赤葉」というパターンが高温ストレス(選択圧)によって生じたのかを検証。
もし高温ストレスで赤葉のカタバミが進化したのであれば、高温環境では光合成や成長、種子生産において赤葉の方が有利になるはずです。
反対に、通常の栽培環境(25℃)では、緑葉が有利になると予想されます。
そこで都会を模した高温のレンガ地表や温室環境での栽培実験、および葉の光合成レベルを計測したところ、どの実験でも予想通りの結果が得られたのです。