一番最近の事例としては、1999年以降の数年の間に東ティモールとコソボで、国連が暫定統治活動を行ったが、これも分離独立を目指す地域の地位確定までの暫定期間に、国連が統治活動を肩代わりした事例だ。微妙な例としては、1992-93年のカンボジアにおける国連の暫定統治が想起される。国際的な正当性を欠いた実効支配政府が、長期にわたる内戦をへて、国家統一を果たすために、カンボジア人各派が共同で構成する主権評議会とは別に統治権限を行使する国連の暫定的な統治権威を受け入れた。ロシアは、東部4州を併合したという立場をとっているので、カンボジア型の暫定統治は、プーチン大統領が受け入れないだろう。

ウクライナの場合、いずれにせよ、安全保障理事会で少なくともイギリスとフランスが拒否権を発動しても拒絶をしてくると思われるので、実現の見込みはない。もっともそれは、ウクライナ全土を対象にして暫定統治を導入するモデルの場合の話だ。

プーチン大統領の発言の裏側には、トランプ政権が登場してから、ウクライナをめぐって国連安保理決議が採択される可能性が出てきたことをふまえた意図があると思われる。今年2月24日に、国連安保理は、ロシア・ウクライナ戦争の早期の停戦を要請する決議を採択した。欧州5カ国が棄権に回ったが、米・露・中を含む残り10カ国が賛成して、採択された。2022年2月のロシアのウクライナ全面侵攻以降、初めて国連安保理がこの戦争に関して採択することができた決議であった。

もし国連安保理が早期停戦を公式に促すのだとしたら、停戦に伴って何らの平和維持活動ミッションあるいはそれに準ずるミッションの派遣の要請が生まれたとき、それを可能にする決議が採択される可能性があるということだ。それをふまえてのことだろう。3月になってから、中国やインドから、ウクライナでの平和維持活動に参加する可能性を検討しているかのような報道が出てきた。