野村不動産の判断はやむを得ない
不動産事業のコンサルティングを手掛けるオラガ総研代表取締役の牧野知弘氏はいう。
「これまでは建設会社はいったん事業主との間で工事の請負契約を締結すると、その後の工事費用の値上がり分は自腹で吸収してなんとかするというのが一般的でしたが、近年の建設費の上昇幅は極めて大きく、それが難しくなっています。本件について詳細はわからないため、あくまで推察ですが、おそらく清水建設は請負契約締結前に複数回にわたり見積もりを上方修正して出し直し、事業主側とのやりとりを重ねるなかで、今後も建築費が著しく上昇するリスクを踏まえて、請負契約は締結できないと判断したのかもしれません。
ちなみに麻布台ヒルズのB棟の建設では、請負契約を締結した建設会社が追加工事の発生による工期の遅延で追加費用が発生し、その費用を発注者から支払ってもらうことができずに、さらに違約金も発生した影響で多額の損失を計上したと伝えられています。業界では『請け負け』と呼ばれる現象です。
また、発注者とディベロッパーの間で、なんらかの理由で法的拘束力のない基本協定が解除にいたるというケースは、『よくあること』ではないものの『しばしば起こること』ではあります」
野村不動産の責任を問う声もある。
「ディベロッパーが開発事業全体をコントロールできないほど建設費の急騰が続いていることが背景にあります。責任というよりも、やむを得ないとしか言いようがありません」(牧野氏)