幽霊が示した真実、そして安息

 だが、幽霊は哲学者の落ち着き払った態度にいら立ちを募らせたのか、アテノドロスの頭上で激しく鎖を鳴らし始めた。さすがのアテノドロスも、これがただ事ではないと悟り、幽霊に従うことに決めた。幽霊は彼を中庭へと導くと、突然、跡形もなく消え失せてしまった。

 翌朝、昨夜の出来事に心を乱されたアテノドロスは、幽霊が消えた場所に印をつけ、地元の役人に事の次第を報告した。役人たちはアテノドロスの情報に基づき、その場所を発掘することを決定。すると、そこからは鎖に繋がれた男性の骸骨が発見されたのである。

 遺骨は丁重に埋葬され、それ以降、その家に幽霊が現れることは二度となかったという。この約2000年前の出来事の結末は、古代ギリシャ・ローマ世界における死生観を色濃く反映している。不当な死を遂げたり、適切な埋葬を受けられなかった者の魂は安らぎを得られず、現世をさまよう、という考え方だ。これは現代においても、多くの文化圏で見られる死生観と通じるものがあるだろう。

 この物語はまた、恐怖や予期せぬ出来事に直面した際の理性の重要性を教えてくれる。アテノドロスの冷静かつ体系的な対応は、非合理的な恐怖に打ち勝つストア派哲学の理想を示している。さらに、死者を敬い、適切な弔いを行うことの重要性も強調されている。アテノドロスと役人たちが遺骨を埋葬したことで、さまよえる魂はようやく安息を得て、屋敷の怪異も終焉を迎えたのである。「アテノドロスの幽霊屋敷」は、単なる怪談としてだけでなく、約2000年前の人々の死生観や哲学を知る上でも、貴重な物語と言えるだろう。

提供元・TOCANA

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