現状で再エネ賦課金は2兆6500億円、石油石炭税は6500億円で、政府が説明しているカーボンプライシングの負担は累積で20兆円となっている。だが排出量取引制度の本当のコストは、2030年単年度だけで30兆円にもなるのだ。

30兆円というのは消費税20兆円の1.5倍にあたる莫大な金額だ。

もちろん、30兆円というのは、GX政策全体のコストであって、排出量取引制度のコストではない、と言う反論はあるだろう。だが、GX政策の中にあって、極端な排出総量規制を担うのが排出量取引制度である。ゆえに、この30兆円なるコストの大部分を排出量取引制度に帰着させるのは間違いではない。

この試算にしても、「米国が同様の対策を採る」「原子力再稼働が順調に進む」など、万事うまくいってもこれだけコストがかかる、というものだ。現実には、もっとコストは高くなるだろう。

そして、図2は2030年断面だが、2035年、2040年となると、もっとこのコストは嵩む。

以上の検討をまとめよう。

排出量取引制度の本質は、排出総量の規制である。 日本は極端な数値目標を掲げているため、それと整合的な排出量取引制度の引き起こすコストは破滅的になる。 政府はこのコストを国民に全く説明していない。

今国会は、GX改正法案を否決し、これ以上のGXの制度化を阻止すべきだ。そして、日本は、ほんとうに国民のためになる現実的なエネルギー政策とは何か、ゼロから再検討すべきだ。

『データが語る気候変動問題のホントとウソ 杉山 大志』