ところで、EUのウクライナ支援が揺れ出した。ロシア軍のウクライナ侵攻以来、ハンガリーのオルバン首相はウクライナへの武器供与を拒否、ハンガリー・ファーストを推進する一方、ロシアのプーチン大統領とも友好関係を築いている。フィツォ首相は施政方針でオルバン政権と同じように、スロバキア第一主義を前面に打ち出し、国益重視の外交を主張している。

欧州委員会は、フィツォ新政権が特別検察庁の廃止を実施した場合、スロバキアの法治体制が大幅に制限される、と懸念している。同時に、スロバキアがEU内で「第2のハンガリー」にならないように注意深く監視しているところだ。

なお、スロバキアの政情を予測するうえで、3月に予定されている大統領選挙は重要となる。スロバキアの大統領は法律に拒否権を発動したり、憲法裁判所で異議を申し立てたりすることができるからだ。ただし、ズザナ・チャプトヴァー現大統領は昨年6月、「殺害の予告を受けている」として、3月の大統領選には出馬しない意向を表明している。

フィツォ首相は国民の抗議デモに屈して辞任に追い込まれた2018年の再現を避けるため、国民経済の停滞や社会の閉塞感はブリュッセルの政策に起因するとEUを悪役にし、ハンガリーと連携をとって政治的・外交的延命を図る可能性が考えられる。

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編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年1月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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