単に脂肪を混ぜるのではなく、分解された脂肪酸が増えたり、一部がモノ・ジグリセリドに変化したりすることで、脂肪全体の結晶化や融解特性が大きく変化すると考えられます。

そこで研究者たちは、リパーゼで部分的に処理した脂肪をレバーと合わせ、強制給餌をしなくてもフォアグラに近い食感を再現できるのかを実験的に確かめることにしました。

フォアグラの闇と光:新技術でドカ食い育成を防げるか?

ドカ食いさせずに「フォアグラ」を作る方法を開発
ドカ食いさせずに「フォアグラ」を作る方法を開発 / FIG8は、食品パテの中にある脂肪がどのように分布しているかを見るために、CARS顕微鏡という特別な装置を使って撮影された画像です。 まず、画像では脂肪の部分が赤く表示されています。これは、脂肪が光を反射して赤く見えるためで、赤い部分はパテの中で脂肪がどこにあるかを示しています。一方、背景が暗くなっている部分は、水分や他の成分が多いエリアで、脂肪が少ない場所を表しています。 また、画像の中には、赤い「針状」や「線」のような細い形のものがあります。これらは、脂肪が固まって結晶となった部分を意味しています。つまり、脂肪が単に液体状態でなく、ある部分は結晶化して固まっているということです。 FIG8では、上の方にFGP(市販のフォアグラパテ)と、リパーゼ処理を2時間行ったサンプル(LTP2)が示されています。これらの画像からは、脂肪が細かく網目状に連なっている、つまり「連続した構造」が見受けられます。これは、脂肪が均一に広がり、口の中でなめらかに溶ける特徴を生み出していると考えられます。 一方、下の方にはリパーゼ処理を4時間行ったサンプル(LTP4)と、処理をしていないサンプル(LTP0)が示されています。ここでは、リパーゼ処理を4時間行ったサンプルでは、脂肪結晶がより多く、はっきりとした独立した形で見えることが分かります。つまり、長い時間リパーゼを作用させると、脂肪の一部がさらに分解され、固い結晶になりやすくなるのです。 このように、FIG8の画像は、リパーゼの処理時間が変わるとパテ内の脂肪の形や分布がどのように変化するかを直感的に示しています。これにより、どの条件が最もフォアグラに近い食感を生み出すのかを研究者が見極めるための重要な手がかりとなっています。/Credit:Mathias Baechle et al . Physics of Fluids (2025)