ところで、22日、野坂昭如の小説「火垂るの墓」のアニメーションフィルム(制作スタジオジブリ、高畑勲監督、1988年)を観る機会があった。「火垂るの墓」は、戦時中の日本を舞台にした小説であり、1945年の神戸を中心に、戦争の悲惨さを描いた作品だ。
14歳の少年の清太とその妹、4歳の節子2人の戦時下の生き様を描いている。母親は米軍の空襲で死に、父親は海軍の出征している。一時期、2人は親戚の家に疎開するが、次第に冷遇されたので出ていく。2人は使われていない防空壕を見つけ、そこで生活するようになる。食事もままならず、栄養失調で妹は亡くなり、最終的に少年も駅構内で死ぬ。同作品は戦争文学として日本の代表作品と評価されている。
野坂の戦争体験をもとにリアルに冷静に描かれている。戦争を知らない世代の当方にも、戦争が如何に非人間的であり、絶望的な行動かが伝わってきた。スタジオジブリによるアニメ映画によって、国際的にも広く知られるようになった作品だ。
ウクライナ戦争でも多くの孤児が生まれ、悲惨な環境で生きていかなければならない少年、少女たちがいる。ウクライナ戦争3年間で、少なくとも650人の子どもが亡くなり、約2,520人の子どもが死傷したという。国連の集計では、今年1月までの約3年間でウクライナの民間人1万2605人が死亡、2万9178人が負傷した。これまでに約690万人が国外に避難した。いずれも実数はもっと多いといわれている。
「戦争論」で有名なカール・フォン・クラウゼヴィッツ(プロイセンの軍事思想家)は「戦争とは、政治の延長に他ならない」と述べている。その政治の延長の戦争で無数の命が犠牲となっている。トランプ氏のウクライナ停戦案が現実化し、ウクライナ国民に‘‘冷たい和平‘‘であったとして、砲丸やミサイルが飛んでこない普通の生活を戻してほしい。これはロシア側にも言えることだ。戦争で勝利者はなく、敗北者だけだからだ。