つまり、マイナ保険証により「なりすまし」受診が減少することは実際にはほとんどないわけです。したがって、不正受診防止はマイナ保険証推進の根拠とは成り得ません。
以前の論考では、不備を指摘するだけではなく、改善策も提言しました。厚労省が不備を認め、制度の改善を前向きに検討することを期待したいと思います。今後の対応の有無により、厚労省がマイナ保険証の制度に真剣に取り組んでいるかどうかが判明します。
今回は、8つのファクトチェックサイトに依頼してみましたが、取り上げてくれたのは一つのサイトのみでした。これは実に嘆かわしいことです。何故ならば、政府の誤情報は民間の誤情報と比べて国民に対する影響が極めて大きいためです。そのため、最優先でファクトチェックするべきものは、政府が流す情報だと私は考えます。
誤情報は、「勘違い・誤解により拡散した間違い情報」と定義されます。この定義で重要な点は、「勘違い・誤解が原因」という点です。人間は誰でも勘違いや誤解をすることはあります。したがって、政府や新聞などでも誤情報を発信してしまうことは有り得るのです。
たとえば、「原発の安全神話」は戦後最大の政府の誤情報です。政府は、地震や津波が起きても原発は安全と主張していましたが、東日本大震災の時、原発事故は起きてしまいました。政府の誤情報は国民に桁外れのダメージを与えることがよく分かります。ハンセン病問題や薬害エイズ事件も忘れてはならない重大な政府の誤情報でした。
これらは戦後日本の3大誤情報ではないかと私は思います。ハンセン病問題では、治療薬が開発された後においても、国により隔離政策が続行されて、隔離が必要という誤情報が発信され続けました。その結果、患者やその家族の人権が侵害されました。薬害エイズ事件では、厚労省は血友病の治療に用いる非加熱製剤の危険性を認識し、加熱製剤を認可した後も、危険な非加熱製剤をただちに回収せず、非加熱製剤は危険であるという情報を発信しませんでした。