もちろんこうした流れの変化には、バイデン政権から180°方向転換したトランプ大統領による政策に米国企業がおもねるという動機も含まれているのだろう。
しかし仮にトランプファクターがなくても、金利が上昇し記録的なインフレが進む中で、初期投資がかさみ(太陽光や風力発電では発電コストのほとんどが初期投資由来)、投資回収に長期を要する再エネ等のグリーン投資の利回りが、将来のキャッシュフローの割引率が拡大することで急低下していることは間違いなく、またAI等による短中期的な電力需要急拡大と、それへの対応力が国家の競争力に直結するという緊急課題への現実的な感覚が経済界に浸透してきているととらえるべきではないだろうか。
そう考えると、上記のフィンク氏の発言の背景にあるのは、今や世界一の化石エネルギー産出国となった米国にとって、その潤沢なエネルギーを使って世界の覇権を再確立する好機ととらえ、それを「ビジネス機会」とする認識が米国の経済界・金融界に広がっているという本質的な変化の表れとみるべきではないだろうか。
事実、フィンク氏はパネルの発言の中で今のエネルギーの状況について「ヨーロッパに対するwakeup call(目覚まし警笛)」と皮肉を交えて表現して、インフレ経済環境の下でコスト上昇にあえぎ、脱産業化が進み、エネルギー転換も進まなくなっているヨーロッパを反面教師としている。
経済界は“静かに支持” トランプ2.0の実像
日本の報道を見ている限り、トランプ2.0は米国内外でハチャメチャな政策を次々と繰り出し、(欧州やカナダ、国連などから)国際的な批判や反発をもたらし、報復や訴訟の嵐を巻き起こしているような印象を持たれがちだ。
しかし、実際今回ニューヨーク・ワシントンで面談した米国のビジネス関係者たちによると、確かに不規則発言や思い付きのようにコロコロ変わる方針(関税政策、政府縮小など)によってビジネスが翻弄されている面はあるものの、大統領のそうした発言は「ディール」のためにしている発言であり、政権が志向している政策の方向性自体は必ずしもか間違ったものではなく、経済界によって静かに支持されているという声が聞かれた。