ポーランドの森で「黒いオオカミ」が姿を現しました。
ポーランドの自然保護団体「SAVE Wildlife Conservation Fund」が設置した自動撮影カメラに、黒いオオカミが川を渡る様子が記録されたのです。
これはポーランド国内で撮影された初の黒毛個体であり、地元の人たちを大いに驚かせました。
この発見は、単なる珍しい色の個体の記録という枠を超え、遺伝子の謎に迫るための貴重な情報となります。
目次
- 感染症から生き残るオオカミの多くは「特定の遺伝子変異」を持っている
- ポーランドでも「黒の遺伝子」を持つ漆黒の狼が発見される
感染症から生き残るオオカミの多くは「特定の遺伝子変異」を持っている
通常、オオカミといえば、灰色の被毛をもつことで知られています。
しかし「黒色の被毛」をもつオオカミが発見されることがあります。
黒いオオカミは、実は北米では比較的知られた存在です。
特にアメリカのイエローストーン国立公園では、個体の約半数が黒毛であると報告されています。

イエローストーン国立公園におけるこの現象の背後にあるのは、特定の遺伝子変異です。
2022年に『Science』誌に掲載された英オックスフォード大学(University of Oxford)とイエローストーン国立公園の共同研究によると、この変異はウイルス感染症への耐性と関連があるようです。
研究では、犬ジステンパーウイルス(CDV)という致死的な感染症に対して、黒毛のオオカミの方が灰色のオオカミよりも高い生存率を示すことが確認されました。
抗体を調査したところ、CDVに対する抗体をもつオオカミは黒色であることが多いと分かっています。
そのため研究者たちは、「被毛を黒色にする遺伝子こそがCDV感染から生き延びる能力を与えている」という仮説を支持しています。