
Orthosie/iStock
区分マンションには、区分所有者で構成される管理組合が必ず存在し、その管理組合がマンションの管理運営を行っている。実際の管理執行は管理組合員の中から選任された理事や役員が行うことになるのだが、今、この管理組合が「実質的に乗っ取られる」という事案が密かに増加している。
区分マンションを収益用(賃貸物件として貸し出すなど)として所有している人なら実感していると思うが、マンション管理組合の理事や役員は意外とやるべき業務が多く、できれば理事や役員は引き受けたくないというのが素直な心情だろう。
この「素直な心情」を巧みに利用し、管理組合を実質的に乗っ取るというケースが実際に起こっているのだ。
管理組合乗っ取りのスキームはこうだ。まず、比較的価格が低く、戸数が多めの区分マンション(主にワンルームマンション)を購入する。その後、管理組合の理事長などの役職に立候補し選任されれば、大規模修繕工事など大きなお金を動かせる管理組合意思決定の中枢となることができる。
もちろん、管理組合の理事長が好き勝手に管理組合の資産(積立金など)を使えるわけではなく、さらには大規模修繕工事などを行う場合は管理組合の総会を開き、他の管理組合員の賛同(議決)を得なければならない。
実は、これこそが乗っ取りスキームの核心なのである。重要なのは、収益用で区分マンションを所有している人の多くは、総会に出席することも少ないし、理事や役員などへの就任もできるだけ避けたいという心理が働く点だ。
その為、総会の通知を受けても本人は出席せず、委任状などによって総会議案への意思決定は「理事長(理事会)に一任する」というケースが非常に多い。このような形になり、総会で他の組合員の賛同を得られれば、理事長は議決に従い堂々と管理執行ができるようになるのである。
問題は、その理事長(理事会)が管理組合の資産を「食い物」にしようとしているかどうかだ。