ちなみに、英国防省によると、昨年10月時点で英国の正規軍の人員は海軍・海兵隊が約3万1000人、陸軍が約7万4000人、空軍が約3万7000人である。
「英軍は現在、エストニアやポーランドへの前方展開など、他の重要な任務も遂行しているため、既存の任務に支障をきたさないように慎重に検討する必要がある」とダナット氏はいう。
過去にはイラクやアフガニスタンに約1万人の兵士をローテーションで派遣し、1990年代のボスニア紛争へも派遣したが、当時は現在よりもはるかに大規模な軍隊を保有していた。
「どんな活動をするのかが決まっていない」
想定される平和維持活動の具体的な性質が決まっていないようであることも懸念だ、とダナット氏は指摘する。
「地上部隊が実際に展開されるのか、あるいは衛星からの航空監視によって停戦を監視する形になるのかさえ決まっていない。平和維持活動の性質が定まっていない段階では、どのような交戦規定が必要になるのかを具体的に議論することができない」。
「ウクライナとロシアの最前線に国際部隊を配置することは非常に危険だ。ウクライナ国内でのより慎重な展開が求められる」。
平和維持活動の具体的な内容や目的が明確になるまでは、英国がどのような規模で、どのような役割を果たすことができるのかを判断することは困難であり、「米国の関与の意向も重要な要素となる」。
「過去の事例は、平和維持活動の規模、期間、そしてそれに伴う兵站や人員の維持が、派遣国の軍事力に大きな影響を与えることを示している。また、過去の成功例は、当時の軍隊の規模や国際的な状況といった特有の背景があった」。
「ウクライナへの潜在的な平和維持部隊の派遣を検討する際には、これらの過去の経験から得られた教訓を踏まえ、現在の英軍の能力、他の国際的な責務、そして想定される平和維持活動の性質と規模を慎重に評価する必要がある」。
昨年7月に発足した、スターマー労働党政権。「最終的に何を達成しようとしているのか、大きな政治目標が見えてこない」と政治家、学者、ジャーナリストらが指摘してきた。筆者も同様の思いを持つ。