その結果、皮膚の苦味受容体は、角化細胞内部に侵入した有害物質を感知することで活性化され、「排出ポンプ」のスイッチをオンにすることで、有害物質を細胞外に排除すると分かりました。

皮膚の苦味受容体を活性化させて有害物質を排出する

この発見は、生理学的な興味を満たすだけでなく、スキンケアや医療の分野にも応用できる可能性があります。

例えば、苦味受容体を活性化する塗り薬が開発されれば、皮膚に付着した有害物質を効率的に排出し、炎症や皮膚障害を防ぐ助けとなるかもしれません。

特に、環境汚染やアレルギー物質にさらされやすい人にとって、この技術は有望なスキンケアアプローチとなるでしょう。

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苦味受容体を活性化させ、皮膚のバリアを向上させられるかも / Credit:Canva

ただし、苦味受容体はすべての有害物質に対して反応するわけではありません。

一部の化学物質はこのシステムを回避して細胞に蓄積するため、さらなる研究が必要だといいます。

もし、これら「苦味受容体に反応しない化学物質」に対しても、人為的に苦味受容体を反応させることができるなら、蓄積された有害物質を排出できるかもしれません。

また、過去の研究では、苦味受容体が舌だけでなく、気道や腸にも存在し、それぞれの環境で異なる役割を果たしていることが示唆されています。

本研究はその知見をさらに広げ、皮膚における新たな機能を明らかにしました。

私たちは舌だけでなく、体全体で苦味を感じ、有害物質から身を守っているのです。

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参考文献

「舌」と同じ苦味受容体が「皮膚」にも存在することを発見 世界で初めて 有害物質の感知・排出に重要な働き(PDF)
https://www.ous.ac.jp/common/files/202409051503170179876.pdf

元論文

Intracellular TAS2Rs act as a gatekeeper for the excretion of harmful substances via ABCB1 in keratinocytes
https://doi.org/10.1096/fba.2024-00074