早稲田大学の看板学部である政治経済学部、いわゆる「早稲田の政経」が、東京大学と並び国立大学トップクラスの京都大学と同レベルの格にまで上昇したという見方が話題を呼んでいる。「週刊現代」(講談社/2月1・8日号)などによれば、入試の一般選抜で共通テストの受験、さらには数学I・Aを必須としたことで、難易度が上昇しているという。早稲田大学といえば、就職実績や受験生からの人気をめぐって慶應義塾大学と比較されることも少なくないが、大手IT企業の人事担当者は「何をもって格とするのかは不明だが、新卒採用の選考において早稲田か慶應か京大かが、結果に大きな影響を与えることはないのではないか。その意味では、ほぼ同列といえるでしょう」という。では、早稲田大学の政経学部の評価・人気というのは近年、上昇しているのか。また、京都大学の文系学部と同じレベルにまで上がっているといえるのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。
私大2トップとして比較されることが多い早稲田大学と慶應義塾大学だが、ともに受験生からの人気は高い。2024年度の早稲田大の志願者数は前年比98.4%の8万9420人、慶應大は同101%の3万7600人と高い数字を維持している。前述のとおり難易度が上昇傾向にあるといわれる早稲田大の政経学部と慶應大の類似学部の偏差値を比較してみると、早稲田大の政経学部は経済学科が70.0、国際政治経済学科が67.5、慶應大の経済学部経済学科(B方式)が67.5、法学部政治学科が67.5(河合塾「2025年度入試難易予想ランキング表」より)。ほぼ同じ水準といえる。ちなみに京都大学の経済学部(経済経営文系)は67.5、法学部は67.5となっている。
国公立大学志望者の併願が増加
早稲田の政経学部の評価・人気は上昇しているのか。大学ジャーナリストの石渡嶺司氏はいう。
「人気が上昇した、というよりは人気が復調した、というほうが正確です。さらに国公立大学志望者の併願が増えて評価が上がっています。早稲田大の政経学部は2021年度から国際教養学部、スポーツ科学部と並んで共通テスト受験を必須としました。しかも、政経済学部は共通テストで数学1・Aを必須としています。この負担増を敬遠する受験生が多く、20年度に7881人だった志願者数は21年度は5669人、22年度は4872人と大きく減りました。ただ、数学を必須とすることで国公立大学志望者の併願が増えました。国公立大は数学を必須とするところが多く、受験生からすれば併願しやすくなったのです。
そもそも、文部科学省が個別の大学に求める大学入試改革の一つに、文系学部での数学必須化が入っています。経済学を学ぶ学部学科では数学は避けて通れませんので、この入試改革は間違っていません。25年度は代々木ゼミナールの速報値では一般選抜の志願者数は3251人、共通テスト方式は3964人で合計7251人と7000人台を回復しました」