完全に遮断することは不可能
外食チェーン関係者はいう。
「問題発生の直後に閉店し、保健所とも連携して検査と対策を実施し、かつ全国の店舗に対策の徹底を指示したということなので、迅速にやるべきことを的確に実施したといっていいでしょう。大手外食チェーン各社は過去に異物混入が相次いで起きたことを受けて、現在では独自に厳しい基準を策定し、定期的に清掃業者や害虫駆除業者を入れ、かつ従業員教育も行うなど衛生・安全管理を徹底しています。店舗でアクシデントが起こればすぐに本部や保健所に報告をあげて対応を行うのに加え、積極的に情報を公表するように努めています。
それでも、店舗内と屋外はお客の出入り口、材料の搬入口、換気口、排水溝などを通じて空間的につながっており、完全に遮断することは不可能です。よって、すき家のように約2000店舗も展開していれば、年に数回はアクシデントが生じてしまうというのは、やむを得ない面があります。もちろん安さを追及するゆえに衛生・安全を軽視するということは許されませんが、すき家の価値は、できるだけコストを低減して顧客に安く美味しい牛丼を提供するという点にあり、経営努力をするなかでトラブルが生じてしまうということを顧客がどう受け止めるのかという問題でもあるでしょう」
飲食店における異物混入事案は珍しくない。ここ数年の事例をあげれば、22年にファミリーレストラン「ガスト」のポテトフライに虫の足が混入する事例が発生。マクドナルドでは22年12月に「マックフライポテト」の箱のなかに人の爪が混入するという事案が、23年2月にはハンバーガーにゴキブリが混入するという事例が発生。23年5月には「丸亀製麺」の「丸亀シェイクうどん」にカエルが混入していたことが発覚し、同商品の販売を一時休止。23年11月にはマクドナルドの冬の風物詩「グラコロ」内に虫が混入するという事例が発生した。23年11月にはイタリアンレストランチェーン「サイゼリヤ」が、店舗で提供したサラダにカエルが混入する事案が発生したと発表した。
当サイトは23年2月18日付記事『マクドナルド、商品にゴキブリや人の爪が混入…8年前の悪夢再来か、事故再発の理由』で、飲食店の異物混入防止への取り組みや、どのような事案がなくならない背景について報じていたが、以下に改めて再掲載する。
※以下、肩書・固有名詞・金額・時間表記等は掲載当時のまま
――以下、再掲載(一部抜粋)――
自身でも飲食店経営を手掛ける飲食プロデューサーで東京未来倶楽部(株)代表の江間正和氏に解説してもらった。
なぜゴキブリの混入が起きるのか。厨房(キッチン)と販売カウンター、客席、屋外は、仕切られていたり扉があったとしても、空間としてはつながっており、扉の開け閉めによって接触が避けられない造りとなっています。つまり、どんなに注意を払っていても、外部からの虫などの侵入を100%遮断することは困難であり、調理の途中でふと目を離した隙に虫が異物として混入してしまう可能性が残されてしまいます。毎日長時間調理をしている店舗では、どれほど管理を徹底しても100%大丈夫とは言い切れません。
飲食店で大きなゴキブリを見かけることがありますが、これは店舗が不衛生というよりも、多くは店外のゴミ捨て場や公園の草むらなどに生息する外部のゴキブリが、飲食店の食べ物の匂いにひかれて迷いこんでしまったケースが多いと思います。路面1階の店舗だと、扉の開け閉めのタイミングで隙間から侵入してくるので、店側からすると本当に迷惑なことです。
ただ、小さな茶色いゴキブリ、通称チャバネは、お店に住み着いていることが多く、これを何回か見かけたら、お店の責任だと思ってもいいでしょう。チャバネは、製氷機、洗浄機、冷蔵庫などのモーター付近の温かいところを中心に生息していて、放っておいても減ることはまずありません。駆除業者に依頼して退治するのが通常で、マクドナルドのような大手チェーンは定期的に駆除業者を入れているので、今回の事件は「外部から侵入した虫」だと考えられます。
さらに通常の飲食店よりも保健所の許可が厳しくなる「食品の製造販売」では、製造場所は作業区分に応じて区画されたり、作業場外に原料倉庫を設けたり、極力外部と遮断された空間を求められます(取り扱う食品の種類や保健所によって判断基準は若干異なります)。床から天井まで壁を設置して外部と遮断された空間で調理していれば虫の侵入はなさそうですが、人の出入りがある扉の開閉がある以上、100%の遮断・隔離は困難で、外部から材料(段ボールや容器関連)を運び込む際に虫がついている可能性も0%ではありません。
マクドナルドのような大手チェーンは、虫の混入は企業イメージのダウンとなり痛手になることは十分に認識しており、相当な注意を払って対策をしているはずですが、確率的に100%大丈夫とはいえないため、今後もこのようなことは起こり得ると考えられます。もちろん、衛生管理や定期的な害虫駆除、外部空間との接触面の最小化(極力隙間をつくらない)、扉の開閉時間の短縮、調理空間までの間に距離を置くなど、可能な限りの対策は必要となりますが、店舗の造りや広さによっても限界があるのが実情です。
(文=Business Journal編集部)
提供元・Business Journal
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