―2022年2月のロシアのウクライナへの全面侵攻以来、ロシアのスパイ工作の状況は大きく変わったのでしょうか。
ソルダトフ氏:完全にそうです。残念なことですが、はるかに攻撃的になり、はるかにリスクを取るようになっています。ウクライナ戦争開始後の2022年、多くのロシアの外交官らが英国を含む欧州諸国から追放されました。外交官という隠れ蓑があった人たちです。
ロシアの情報機関はスパイ網を再結成する道を見つけたのです。新しい使命を見つけたのです。ロシアとは全く関係ない人々をスパイとして使うわけです、今回のように。
今回有罪になった人々はロシアの国民ではありませんし、外交官という隠れ蓑もない人たちです。
ロシア当局はこうした人々のスパイ行為が発覚して、国外追放になってもかまわないと考えています。私たちがもうすでに知っているように、ロシアのプーチン大統領はこうした人々が逮捕されても気にしません。特別な手段を使ってモスクワに呼ぼうともしません。人によっては、モスクワに連れてくることもあったのですが。
―欧州全体では、このようなスパイ網はどれぐらい広がっているのでしょうか。
ソルダトフ氏:欧州全体でははるかに多く、かつ危険な例が散見されています。ドイツでもそうですし。
ただ、問題となるのは、西欧側がこのような攻撃に対してまっとうな対抗策を打ち出せていないことです。というのは、冷戦時代、ロシア(注:当時はソ連)の情報機関はこのような破壊攻撃を行っていませんでしたので、西側はどうしたらよいか、答えがないのです。
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ーロシアの破壊工作というのはどういうものでしょうか。
ソルダトフ氏:ロシアの情報機関などが実行しますが、それほど洗練されておらず、特に優れたものでもないように思えるでしょう。工作の目的は物理的に建物などを破壊したり、個人を攻撃したりすることだけではありません。目的は、メッセージを送ることなのです。