その際、脳の血流変化を測定できるfNIRS(簡便に脳の活動を測定できる赤外線を使用した検査方法。従来の100分の1のコストで導入可能)を用いて脳活動を記録しました。
さらに、被験者の心拍変動や主観的なストレス評価も行い、ストレスがどのように身体に影響を与えるのかを分析しました。
過敏性腸症候群は「気のせい」ではない!脳活動に明らかな違いを発見
実験の結果、VR空間での精神的ストレス場面において、IBS患者の脳では、健常者には見られない特徴的なパターンが観察されました。
特に、左腹外側前頭前野の活動が過剰に活発になり、左背外側前頭前野の活動が低下していることが確認されました。

この結果は、IBS患者が精神的ストレスに対して過剰に反応し、それが腸の異常な動きにつながっている可能性を示しています。
IBS患者が訴える「緊張するとお腹が痛くなる」「下痢になる」といった症状は、決して「気のせい」ではありません。
過敏性腸症候群(IBS)は、健常者と脳の反応が異なる病気なのです。
また今回の新しい実験により、「VRを使った実験でストレスの影響を再現できる」ことも確認されました。
今後もVR技術を導入することで、従来の検査では見えなかった病気のメカニズムを解明することが可能かもしれません。
ストレスは万病のもとと言われますが、ストレスの影響が科学的に証明されつつあります。
「見えない苦痛を可視化」していくことで、IBS患者を含む多くの人々を理解し、支えていくことができるでしょう。
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参考文献
過敏性腸症候群患者の”見えない苦痛”を可視化 ~仮想現実空間での精神的ストレスにより特異的な脳活動を確認~(PDF)
https://k.kawasaki-m.ac.jp/document/2025/20250303.pdf