会社側の考え方
申告者の投稿がSNS上で拡散されキョードー大阪に対するさまざまな声が上がるなか、企業としてなんらかの対応・説明を行わなければならない状況だったともいえるが、あくまで一般的な話として、今回のようなケースでは、どのような対応を取るべきなのか。危機管理・広報コンサルタントで、長年、企業・自治体の管理職向けに模擬緊急記者会見トレーニングや危機管理広報、SNSリスク対策研修・セミナーの講師なども手掛けてきた平能哲也氏はいう。
「まず前提として、今回の事案について事実関係を私がコメントできる立場にはないため、あくまで一般論としてお話しします。運営会社としてはSNS投稿がネット上で拡散され、会社に対する批判が高まるなかで、なんらかの声明を出す必要があったともいえます。また、もし仮に同社スタッフの証言とされる内容に事実と異なる内容がある場合、何らかの説明をすべきであったともいえるかもしれません。
各当事者の主張について、事実であるかどうかの調査は警察の仕事であり、事実関係について会社側が何らかの意見、もしくは意見と受け取られることを述べるのは適切ではありません。よって、『当社は警察の捜査に全面的に協力いたしました。今後もそのような対応をしてまいります』という書き方にとどめるのが一般的です。また、文の最後にある『なお、SNS上で誤った事実を記載・拡散することは』は、断定的な主張と誤解される『誤った事実』ではなく、『真偽不明の事実』という表現を使うべきでしょう。
また、危機管理広報の観点では、相手の感情を害する(特に相手が怒りの感情を強める)、逆なでするような対応は避けるのが基本であり、被害申告者が3月17日にXに投稿した内容について一つずつ(以下、補足説明)として反論するのは避けるべきでした。例えば『当社がスタッフに聞き取り調査をした結果、次のような発言はなかったと確認しております』として、キョードー大阪スタッフの発言として記述されている中で否定するものを簡潔に箇条書きで記述すれば良かったでしょう。
こうした事案に関する報告のリリースでは、当日の対応内容を表として時系列にまとめておくことも重要です。今回のケースでいえば、ライブのスタート時間、被害の申告がスタッフに伝わった時間、警察が到着した時間、その後の対応が行われた時間などを客観的な事実として記述。そこに意見や主張は一切入れないようにします。もし時間の記録をとっていなければ、対応順に時系列で記載するという形になります。事実関係が不明なことを、読んだ人に客観的に理解してもらうためには、時系列での記述が必須です。そのため、企業は従業員(今回のケースでは運営スタッフ)に対し、突発的な事件、事故や何らかのトラブル対応の際には、冷静に対応した時間をメモするようにマニュアル化して指導しておくべきです」
イベント運営会社関係者はいう。
「対応が非常に難しい事案です。被害を申告している一般人の方の主張について、事細かく否定をするというのは基本的には避けるべき行為ということになりますが、もし仮にきちんとスタッフにヒヤリングをした上で事実と異なる内容があることが確認されれば、会社として否定をしておくべきという考え方もあるでしょう。特にキョードー大阪のように多くの興行を扱っている会社の場合、ステークホルダーも多く、他のイベントへの影響や信頼性ということも考慮しなければならないので、謝罪すべき点は謝罪しつつ、広がっている情報に事実ではない点があれば否定も含めて説明をすべきだという考え方も理解はできます。とはいえ、被害を申告している一般人の方の発言を一つひとつ挙げて否定するという行為は、かえって企業イメージを悪い方向に誘導してしまうリスクもあり、またモラル的にどうなのかという問題もあるので、適切といえるのかどうかは難しいところです。対応に落ち度があった部分は謝罪しつつ、事案としてすでに警察に対応を委ねているのであれば、その旨を短く伝えるのみでよかったようにも感じます」
(文=Business Journal編集部、協力=平能哲也/危機管理・広報コンサルタント)
提供元・Business Journal
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