少し前に「子どもがベビーカーのうちは、百貨店のショッピングは日本橋三越本店一択」といった内容のXの投稿が話題となっていた。反響を見ると「確かに平和」「落ち着いて買い物が楽しめる」「お客さんがやさしい」といった声が連なる。日本橋三越はベビーカーを使う方々にとって最適な百貨店なのか。店舗へ出掛けて調べてみた。

 ベビーカーを使って子どもと一緒にデパートや百貨店へショッピングに出かける。残念なことに、今のご時世、こんなごく普通のことを行うのが非常に難しくなっている。駅はエレベーター設置などバリアフリー化が進み、電車はベビーカーを置くスペースが増え、バスも床の低い車両が標準化。タクシーもベビーカーを乗せやすい天井の高いタイプの車が増えるなど、公共交通機関はベビーカーを使っても乗りやすい環境整備が進んでいる。だが、過度なストレスを抱える人が多いこの時代、車内には「混雑しているのにベビーカーで乗ってくるな!」「子どもがギャーギャー泣いてうるさい!」という理由で刺すような視線を向けてくる人がいる可能性があり、移動中は心が休まらない。

 また、東京都内の百貨店は海外からの観光客が多く、巨大なスーツケースを転がしながらショッピングを楽しんでいる人もいるため、ベビーカーとスーツケースがぶつかって子どもが泣き出してしまう可能性も高い。移動中も買い物中も120%気を張った状態でなければならないため、ショッピングを楽しむなんてことはできないというのが現状だ。

駅と百貨店は雨の日でも濡れることなく移動できる

 そうしたなかで話題になっている日本橋三越本店があるのは、日本の道路の起点となっている日本橋。その川の左岸にある店舗は、この地で呉服店を始めてから300年以上、1904 (明治37)年に「デパートメントストア宣言」をして百貨店としてスタートしてから120年以上の歴史を持つ建物。1935(昭和10)年に建てられた写真の本館は、6階に劇場が、建物内の中央の吹き抜けにパイプオルガンが組み込まれた建物で、国の重要文化財に指定されている。

 建物の地下は、地下鉄銀座線、半蔵門線の三越前駅、JR総武線快速の新日本橋駅とつながっており、駅と百貨店は雨の日でも濡れることなく移動できる。築100年以上の建物だが、エレベーターやスロープなどが整備されており、ベビーカーを利用しても店内の移動や店内から駅、店内から通り、店内から駐車場への移動はスムーズだ。

 1階から6階までは通路が広くとってありベビーカーを使っても移動はスムーズ。吹き抜けがある場所に休憩用の椅子が設置されているのもありがたい。7階は催事場があり混雑する場所。訪れた日も「あんこ博覧会」という全国のあんこのスイーツが人気の店がたくさん出店するイベントが行われ、多くの人が行き来していた。

 店を訪れる人を見ると、お孫さんがいるような世代の女性が中心で、海外の観光客は皆無。展示場の通路は他の売り場と比べ少々狭かったものの、スーツケースにぶつかる心配はなさそうだ。屋上は広々とした庭園。この日は風が強く寒かったので屋上に出る人はいなかったが、これから暖かくなっていけば、格好の休憩場所になるだろう。