マサチューセッツ大学アマースト校の研究チームは、この点を調査するため、傷つけられた皮膚細胞が電気的なスパイク(電気的信号)を発生させるか、またそれが伝播していくのか調べることにしました
実験では、60個の電極を配置したチップ上にヒト上皮細胞を培養し、 傷を与えた場所やその他の場所で電気的なポテンシャルを計測しました。
皮膚の「叫び」は周囲に伝播していた
実験の結果、 研究者たちは、傷つけられた皮膚細胞が発する電気信号が、実際に周囲の細胞へと伝播していることを確認しました。
傷ついた皮膚の細胞から発せられる電気スパイクは、その傷口から数百マイクロメートルという距離にわたって、毎秒約10ミリメートルの速度で伝播していました。
皮膚の細胞はこれまで沈黙を保っていると考えられてきたため、この結果は驚きです。

研究チームは次のように述べています。
「上皮細胞は傷つくと、隣の細胞に叫び声をあげます。
この叫びはゆっくりと、しつこく、驚くほど遠くまで届きます。
神経系の働きに似ていますが、その1000倍遅いものです」
実際、上皮細胞の「叫び」は、神経細胞よりもはるかに遅いものの、ゆっくりと時間をかけて伝わっていくと分かりました。
いくつかの「叫び」や「会話」は、最長5時間記録されたというのだから驚きです。
ちなみにこの現象については未だ明らかになっていない部分が多いですが、皮膚の信号の電波にはカルシウムイオンが関与していると考えられています。
「皮膚の叫び」に対する理解は、将来、ウェアラブルセンサーや傷の治療を早める電子包帯などの応用へと繋がるかもしれません。
傷ついた細胞間の叫びを理解することで、新たな扉が開かれるのです。
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参考文献
Slow, silent ‘scream’ of epithelial cells detected for first time
https://www.eurekalert.org/news-releases/1076752