足をぶつけて「痛い」と感じるのは、神経系を通じて、情報が脳に伝達されているからです。
最新の研究では、そのような伝播は神経系だけでなく皮膚でも生じていることが分かりました。
マサチューセッツ大学アマースト校(UMass Amherst)の研究チームは、皮膚細胞が外的刺激を受けた際、 危険を知らせる信号を発すると報告しました。
傷ついた細胞は「叫び声」を上げ、隣の細胞に危険を知らせていくのです。
研究の詳細は、2025年3月17日付の『Proceedings of the National Academy of Sciences』誌に掲載されました。
目次
- 神経系は体全体で会話している――皮膚は?
- 皮膚の「叫び」は周囲に伝播していた
神経系は体全体で会話している――皮膚は?
皮膚細胞は通常、私たちの身体を外界から守る壁として機能し、 栄養の吸収や分泌、保護などの役割を担っています。
しかし、これまで皮膚細胞が「電気信号」によるコミュニケーションを行うことは知られていませんでした。
実際、神経細胞や心臓の細胞だけが、「電気的にコミュニケーションを取る」と考えられてきました。

例えば、神経系は私たちの身体の中で情報を伝えるために電気的な信号を発生させます。
これらの信号は非常に速く、数ミリ秒のうちに伝播し、 神経系全体で情報を瞬時に伝えることができます。
神経の伝達は、私たちが動く、考える、反応するために不可欠な役割を担っており、 この速さと精度が神経系の特徴です。
私たちが熱いものを触った時に瞬間的に手を引っ込めたり、「熱い」「痛い」と感じたりするのは、電気信号が体中を伝播している証拠です。

では、皮膚の細胞ではどうでしょうか。
神経細胞のように、何らかの情報を伝えることはあるのでしょうか。