ドイツで23日、連邦議会選挙(定数630)が行われる。複数の世論調査では野党第1党「キリスト教民主・社会同盟」(CDU/CSU)が支持率30%前後で独走、第2党には極右「ドイツのために選択肢」(AfD)が約20%で続き、第3党にショルツ首相の「社会民主党」(SPD)が15%前後、環境保護政党「緑の党」14%、そして左翼党が7%前後と健闘している。一方、リベラル派「自由民主党」(FDP)と左翼党から分裂して結成された「サハラ・ワーゲンクネヒト同盟」(BSW)は約4%と議席獲得に必要な得票率5%の壁をクリアできない状況だ。なお、ドイツの連邦議会の議員定数は、2023年に可決された改革法により、今回の選挙から630議席となった。

連邦議会選で第1党復帰が予想されるCDUのメルツ党首、CDU公式サイトから
選挙戦では終始、第1党を走ってきたCDUのメルツ党首は「ドイツを政治、経済、社会を刷新させるために、CDUが連邦政治に責任を担っていく決意だ」と述べ、選挙での勝利を確信。一方、ショルツ首相は前回選挙のような選挙戦終盤の追い込みを再現できずに苦戦している。一方、AfDのヴァイデル共同党首は「ドイツの再編に乗り出す時を迎えた」と強調、連邦レベルで得票率20%の壁を越え、政治的発言権を更に強めていく意向だ。
選挙戦での争点は3点、①移民・難民対策、②AfD問題、③3年連続リセッション(景気後退)にある国民経済の回復問題だが、バイエルン州のアシャッフェンブルクで1月22日に起きた襲撃事件が契機となって、難民対策が再び選挙戦の中心的テーマとなった。アシャッフェンブルクでのテロ事件では、28歳の容疑者は国外退去を求められていたが、実行されずに居住してきた。それ以来、選挙戦の争点が移民対策に集中してきた経緯がある。
同時に、1月29日のドイツ連邦議会でCDU/CSUが提出した厳格な難民対策を明記した法案が、与党SPDと「緑の党」の反対にもかかわらず、AfDの支持を得て可決されたことから、議会でCDU批判の声が高まった。ドイツの政界ではAfDとは連携しないことが不文律だったからだ。メルツ党首はAfDとは連邦レベルでは一切連携しないと何度も表明してきたが、それを破ったということで、ショルツ首相はメルツ;党首を「タブー破り」と激しく批判したほどだ。