持ち家vs.賃貸の議論をしばしばメディアで拝見しますが、さすが、最近はそのような記事があっても読まなくなりました。理由は不毛であるからです。双方がそれぞれの利点を述べるため、読み手にとっては「なるほど」と思わせますが、欠点をきちんと考察しなかったり記事で書かないため、まるで政治家が選挙演説をするような内容になってしまうのです。

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不動産を生業としているお前の目線からどう考えるのだ、と言われれば「人それぞれ。ライフスタイルで考えるべし」だと思っています。それぞれの長所と短所をどう評価するかは個人の価値観の問題なのです。ただし、一点だけ申し上げると「老後のキャッシュフローを考えよ」だと思います。

ところで、私が大のタワマン嫌いなのは読者はご存じかと思います。何を好んでタワマンに住むのか理解できないのです。私に言わせれば「現代版の団地」でしかありません。

まず、タワマンといえば高層階からの眺めです。それは素敵だと思いますが、そこに住みたいかと言われればNOです。理由はタワマン高層階に行くほど外出する心理が遠のくのです。例えばすぐそばのコンビニに行く、散歩する、買い物に行くというちょっとした行為に不精になります。

この心理分析は実は新幹線と在来線の関係にもあります。たとえば東京を中心に考えると在来線で通勤1時間かかる神奈川、千葉、埼玉は東京のベッドタウンです。ところが新幹線で1時間である静岡県の三島や栃木県の宇都宮、群馬県の高崎だと一県、向こう側まで行けるのですが、おっくうという心理が出てきます。これは乗り物に乗っている時間ではなく距離が人の心を左右する心理的な効果が大きいためです。

同様にタワマンの場合、エレベーターで数十秒、途中階に何度か止まっても外まで数分で行けるのにこれが心理的なバリアになるのです。それと地に足がつかないという状態は子供の教育にはよくないとされます。なので申し訳ないですが、湾岸地区に林立するタワマンと子供人口の増加という事実に残念なエリアだと思うのです。