黒潮続流の異常蛇行がもたらす影響
■黒潮の異常な北上
黒潮続流(Kuroshio Extension, KE)は、通常36°N付近を東向きに流れる暖流で、日本の気候や海洋生態系に大きな影響を与えている。
しかし、2023年4月以降、この黒潮続流が極端に北へ蛇行し、2024年冬には40°Nに到達した。
これは、1993年に人工衛星による観測が開始されて以来、最も北へ蛇行した事例であり、三陸沖の海洋環境に大きな変化をもたらしている。

(画像=黒潮続流の北方蛇行の様子を示す海面高度(SSH)マップ。2023年4月以降、黒潮続流が通常より北側(40°N付近)へ移動し、三陸沖の海洋環境に影響を与えている。(出典: Sugimoto et al., Journal of Oceanography, 2025, DOI:、『TOCANA』より 引用)
■記録的な海洋熱波
黒潮続流の異常な蛇行により、三陸沖では記録的な海洋熱波が発生。2023年4月~2024年8月にかけて、三陸沖の海面水温は+4.9°C上昇し、ほぼ毎日が海洋熱波状態となった。
さらに、黒潮続流から分離した渦が三陸沖に暖水を供給し、通常は寒冷なこの地域に高温の亜熱帯水が流入。結果として、水深50~400mの深さで過去数十年よりも最大10°C高い水温が観測された。

(画像=2023年4月~2024年8月の三陸沖(SOR)の海面水温(SST)異常と海洋熱波(MHW)の発生状況。平均SST異常は+4.9°Cに達し、MHWが頻発している。(出典: Sugimoto et al., Journal of Oceanography, 2025, DOI:、『TOCANA』より 引用)
■大気への影響
極端な海水温の上昇により、通常の2倍以上の熱(300 W/m²)が海から大気へ放出。これにより、大気中の水蒸気量が増加し、日本全体の気候に影響を与えている可能性が指摘されている。
2023~2024年の異常気象(記録的猛暑や暖冬)との関連も疑われており、今後の気象への影響が懸念される。