不幸なことに火事の現場から焼死体が発見されることはあるが、その一方で、どう考えても自発的に燃えたとしか思えない謎の焼死体が発見されている。それは「人体自然発火現象」と呼ばれているきわめてレアでミステリアスな超常現象だ――。

■寝室で燃えた修道士

 きわめて珍しい超常現象「人体自然発火現象(spontaneous human combustion)」では、全身が燃えている場合もあれば身体の一部や衣服だけが燃えていた事例も報告されている。警察の鑑識もお手上げのミステリアスな変死体だ。

 当然ながら犠牲者は死後に発見されているのだが、非常にまれなケースとして犠牲者がすぐには亡くなっていなかった痛ましいケースも報告されているというから興味深い。

 1776年10月、イタリア・フィレンツェの修道士であるドン・ジオ・マリア・ベルトーリは旅に出ていたのだが、その日、現在のアルブルッツォ州キエーティ県フィレットにある義理の兄弟の家にやって来たのだった。

 日中は修道士としてさまざまな務めをしていたこともありひどく疲れていたベルトーリは、夜の祈りを終えると、あてがわれた部屋にすぐに引きこもり就寝した。

 部屋に入っていったベルトーリがベットに就いたかと思った矢先、その部屋の中から発せられた叫び声に家の者は驚いた。いったい何が起きたというのか。

 急いで部屋に向かった家の者が部屋の扉を開けると、そこにはなんと炎に包まれて床の上に倒れているベルトーリの姿があったのだ。

 家人がベルトーリに近づくと炎は静まり、すぐに完全に消えた。義理の兄弟たちは火傷を負っているベルトーリにあらゆる応急処置を施して、医者に連絡をしたのだった。炎はまるで生き物のように近づいてきた家人に反応して、自らその場を去ったように見えたという。

 ベルトーリは酷い状態で、腕と首と顔に重度の火傷を負っていた。シャツも大半は燃えていたが、肩のあたりを覆っていたハンカチはなぜか燃えていなかった。またナイトキャップが完全に焼け焦げていたのに、その下の頭髪は無事であった。さらにズボン、下着、リストバンドも無傷であったのはかなり奇妙なことであった。