だからこそ、「どうする日本のインフラ」を真面目に考えなければいけない。
今年度、私は地方公共団体インフラの持続可能性評価指標の考案に取り組んだ。インフラの点検データだけでなく、行政データや財政データを用いて2050年時点の地方公共団体の状況を評価することで1つ1つの自治体への関心が高まった。ある県では、政令市を抜いて1位となった町もあり、市町村の規模だけでは把握できない自治体のポテンシャルや個性を見抜くことの重要さに気付くことができた。
人口が減少することに対して過剰な人口増加論を唱え、地域間のパイの奪い合いによる問題の先送りをしていては事態を一層悪化させてしまう。まずは、現実を受け入れることが重要であろう。
限られたリソースの中で地域、都市、国家機能を維持していくために、インフラやハコモノの絶対数を減らすことは合理的である。しかし、インフラのユーザーは住民、建設や維持管理の費用を負担するのも住民である。
最適化に走り、やみくもに「量」を減らすのではなく、過去と現在と未来、短期と長期、平時と有事という視点を持ちながら、「量」と「質」のバランスを考慮し、住民が求め、地域が必要とするインフラとは何かを考えた戦略をとるべきではないか。
財源、労力、技術、あらゆるリソースが公助の限界に達している日本において、その土地に住む人が積極的に地域の未来を考えて行く姿勢こそ、地域に根付く歴史や文化の継承に繋がるのだろう。他人任せではもはや無理である。
また、これまでは人間が住む場所を変えないことを前提としてきたが、人口減少下において国土の使い方や人間の住み方自体を考え直す時期に達しているのかもしれない。人間がインフラをコントロールするのではなく、インフラや国土に合わせて人間が動くという視点も忘れてはいけない。
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並松沙樹:人口減少とインフラ老朽化の複合危機からの処方箋~第1弾 インフラマネジメントに必要な新・コモンズ~