しかしトランプ大統領は今回のルッテ事務総長との会談を受けての記者会見ではで以下のような言明をしたのだった。その内容はホワイトハウスの発表やアメリカ・メディアの報道による。
「われわれはNATOを軍事同盟として強力に堅持しておかねばならない」 「NATOは時宜にかなった強固さを保たねばならない」 「アメリカはNATOの欧州側との共同防衛の誓約(commitment)を揺るがせにはしていない」
公式の場でのトランプ大統領の以上のような言明には並んでいたルッテ事務総長が全面的な同意を表明して「欧州側は今後の防衛費を全体として6,000億ドルから7,000億ドルも増額していくことになった」と述べ、米欧の連帯を強調した。
この欧州側の防衛費の増額はトランプ大統領がこの会見でも欧州の一部の国がGDP2%の公約を守らなかった過去の状況に言及したことへのルッテ事務総長の欧州側を代表しての対応だった。トランプ大統領は「もし公約を履行しない国があれば、アメリカはその国を守らないかもしれないと警告したら、防衛支出は一気に増えた」と述べたのだった。
この「守らない」という言葉は欧州側の一部の国を動かすための「取引手法」であり、米側のNATOへの基本姿勢はあくまでの年来の保持であり、さらなる増強であることが今回のルッテ事務総長の立ち合いで確認されたことになった。
ルッテ事務総長はこの会見でトランプ大統領の言葉を受ける形で、第一次トランプ政権の当初はオバマ政権時代の公約を履行した欧州諸国はほんの3ヵ国ほどに過ぎなかったとも指摘した。それがいまでは加盟32ヵ国のうち、ほぼすべてが2%のハードルに達したか、越えつつある状態だと報告した。
ワシントンの民間研究機関の発表によると、2024年末の段階で防衛費がGDPの2%以上になったことが確認されたのはNATO加盟国のうち合計23ヵ国で、その他の諸国もほとんどがその水準に達しつつあるという。そのうちエストニア、ギリシャ、ラトビア、ポーランド、アメリカの5ヵ国は3%以上、最高はポーランドの4.12%だとされる。