ワサビの根茎には鼻にツンとくる刺激性の香味があるため、日本では薬味や調味料として古くから親しまれてきました。
また食欲増進作用のほかに抗菌作用もあるため、傷みやすいお寿司には欠かせない存在となっています。

それだけではありません。
ワサビには「ヘキサラファン(6-MSITC)」と呼ばれる成分が含まれているのですが、これが抗炎症作用や抗酸化作用を持っているのです。
記憶力や認知機能の衰えは、加齢による脳内の炎症や老化を促進する酸化物質の蓄積が原因の一つとされているため、抗炎症作用や抗酸化作用は脳の健康を維持する上で重要な役割を果たします。
実際、中年成人を対象とした先行研究では、ワサビが脳を落ち着かせて認知機能の改善に役立つことが示唆されていました。
その一方で、脳の衰えが目立ち始める60歳以上の人では、ワサビの効能が調べられていませんでした。
そこで本研究では、ワサビの摂取により、60歳以上の人の記憶力と認知機能が向上するかを実験しています。
ワサビの摂取で記憶力が向上!
実験の参加者は、同大のある宮城県仙台のタウン紙に掲載した広告から募集し、60〜80歳の男女72人(平均年齢65.43歳、男性19人・女性53人)に協力してもらいました。
参加者には、糖尿病や心臓病、精神疾患といった病気の既往歴がなく、また日頃から特定の薬剤を服用していたり、大量の喫煙や飲酒をしていない人を選んでいます。
その後、実験期間の前後に「記憶力」および「認知機能」を測定するテストを受けてもらいました。
記憶力では、個人が経験した出来事に関する「エピソード記憶(=長期記憶)」と、現在進行中の作業に深く関わる「ワーキングメモリ(=短期記憶)」を調べています。
認知機能では、目標達成のために計画を立てて行動・思考する「実行機能」のほか、脳の「処理速度」や「注意力」を調べました。