トランプ大統領は就任宣言の中で「人間は男性と女性の2性だ」と表明し、過激な性的少数派(LGBTQ)運動やジェンダー・フリー運動に対し明確な反対の姿勢を表明、伝統的な価値観を重視する政策を推進してきた。軍隊におけるトランスジェンダーの権利制限はその象徴的な例だろう。
トランプ政権はまた、「文化戦争(Culture War)」と呼ばれる政治的・社会的対立の中で、「政治的正しさ(ポリティカル・コレクトネス)」への反発 を鮮明に打ち出している。例えば、バイデン前大統領時代、米国の植民地政策や奴隷制度に関連した人物像や歴史的な像が破壊されたりする暴動が起きた。一般的に 「モニュメント撤去運動(Monument Removal Movement)」 や 「像撤去運動(Statue Removal Movement)」 と呼ばれる運動だ。特にこの運動は、「BLM(Black Lives Matter)運動」 や 「脱植民地化運動(Decolonization Movement)」 の一環として行われることが多く、南北戦争時の南軍指導者(例:ロバート・E・リー将軍)、奴隷制度を支持していた政治家(例:ジェファーソン・デイヴィス)、さらにはクリストファー・コロンブスの像なども撤去対象となった。大学構内で支持派と反対派の間で激しい論争が起きたりした。
トランプ政権は「反LGBTQ」「反DEI」を掲げているが、歴史的資料までその影響が伸びると、政治的イデオロギーによる歴史の書き換えとなる危険性が出てくる。「ポリティカル・コレクトネス(PC)」に反発する一方、「反PC」を推し進めるあまり、逆に極端な検閲をしてしまう、といった自己矛盾に陥る。
今回のペンタゴンによる写真削除は、もしも「Gay」という単語だけが問題視されているなら、これは歴史の改ざんや言葉狩りに近い動きと捉えられる。特に、「エノラ・ゲイ」は広島に原爆を投下した爆撃機だ。日本人にとっても忘れることが出来ない歴史的出来事だ。