簡単に言えば、宿主胚が「そろそろ脳を作りたいなぁ」と考えているときに、宿主細胞だけが脳にすぐなれる細胞を有していて、移植細胞にそのような細胞がない場合、結果的に脳のほとんどが宿主細胞だけで作られるようになってしまいます。

そのため研究ではまず、採取した幹細胞たちに対して事前の調整を施しました。
この調整は2022年に『Nature』発表された幹細胞の時間の巻き戻し技術がベースとなっています。
また移植細胞の区別がつきやすいようにするため、移植細胞の遺伝子を組み変えて緑色の光を発するように変化させました。
そして緑色に光る細胞(胚性幹細胞)を最大で20個、宿主胚に注入し、74個のキメラ胚が作成されました。
生まれてきたキメラサルは脳まで緑色に輝いていた

キメラ胚の作成が終わると、研究者たちは40匹の代理母の子宮に移植し、12匹の代理母が妊娠、そのうち6匹が正常に出産し、4匹では流産が確認できました。
研究では、このうち出産までたどりついた1匹のオスザルと流産した胎児1体が、全身に高レベルの移植細胞が含まれるキメラであることが確認されました。
特に生きてうまれたオスザルでは移植細胞の濃度がより高く、異なる26の組織を調べたところ、移植細胞の寄与が平均で67%(最小21%~最大92%)に及んでいることが判明します。