「2025年はクルーへの感謝も“NO LIMIT!”」と求人でも積極攻勢をかけるテーマパーク、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)。運営するユー・エス・ジェイ(大阪市)は2月14日、「クルー」と呼ばれるパート・アルバイト従業員の時給を、4月1日から一律で50円引き上げると発表した。最低時給は1210円から1260円になる(時給の上限は1590円)。対象は全てのクルー約1万2000人(全従業員の8割)で、今回の改定で手当も含めれば月間支給総額は平均で7%増える計算だ。4月に開幕する大阪・関西万博の会場スタッフ採用(時給1850円)と競合し、人材獲得競争が激しいため、待遇改善で新規採用や定着を目指すという。

 USJの年間来園客数は1600万人と世界3位のテーマパーク(米テーマエンターテインメント協会<TEA>、2023年調べ)。任天堂のゲームの世界をテーマにした「スーパー・ニンテンドー・ワールド」、アニメ「名探偵コナン」をテーマにしたアトラクションが人気を集め、国内観光客の他、アジアや欧米など幅広くインバウンド(訪日外国人旅行者数)を集めた。為替の円安傾向も追い風に11年連続1位の米フロリダ州にあるウォルト・ディズニーのマジックキングダム(1772万人)、2位のカリフォルニア州にあるディズニーランド(1725万人)に次ぐ2年連続の3位だが、前年比で3割と大きく伸びており、世界1位の座も射程に入る。

USJならではのプレミアム感

 ユー・エス・ジェイはミドル・シニア世代の採用を行うなど積極的な募集をかけている(「USJがハローワークで求人募集 積極採用中の『ミドル・シニア世代』にアプローチ」MBSニュース)。その狙いをユー・エス・ジェイ人事部に聞いた。

「たしかに大阪・関西万博の集客や人材募集の影響もありますが、その先も見据えて、さらに質の高いゲストサービスを提供できる人材は欠かせません。というのも、コロナ禍以降の訪日外国人旅行者数は急速に回復し、アジアだけでなく北米など多様化しています。急増するインバウンドへのきめ細かい対応を行うために、クルーも学生偏重の現状からの脱却を試みています。比較的割合の少ない55歳以上のミドル・シニア層だけではなく、外国人、関西(近畿二府四県)以外の遠方に住む人々と多様な人材にお声をかけさせていただいております」

 国内旅行者であれば来場するのは週末だが多いが、インバウンドは平日が多い。学生のアルバイトではない平日フルタイムに入ることが可能なクルーが求められているのだ。このため、55歳以上の人材を「アクティブミドル&シニア」と呼び、「USJは若い人が働く場所」というイメージを払拭するため、ハローワークにてミドル・シニア向けの説明会を積極的に開催している。独自の説明会&選考会ではクルーしか利用できないクルーカフェの見学を用意することも。また、採用された場合には(条件あり)、USJのスタジオ・パスをペアでプレゼントされるなど、USJならではのプレミアム感が用意されている。

 昨年は年間200人目標だったが、応募が多く300人が採用されている。面接から早ければ2週間で勤務、オリエンテーション(座学)1日、OJT(現場での実習)3日ののちに希望職種で働くことができる。育成のメニューは若者と変わらない。

「募集中の職種は若年層と区別なく約20種類ありますが、業務内容がイメージしやすい、飲食関係(ホール、キッチン)やセキュリティ関係を希望される方が多い印象です。なかにはシステムエンジニアからの初めての接客経験をしたいとマーチャンダイズ部門への転職組もいらっしゃいます。現在、パークでは60歳以上のクルーが4500名以上在籍しており、さまざまなポジションで活躍されています。長年培ってこられた知識と経験を活かし、即戦力として活躍いただけることに加えて、アクティブミドル&シニア・クルーが長期的にパークでいきいきと働く姿は周囲のモチベーション向上や、若手人材の育成にもつながると期待しています」