その結果、糸を引っ張ると分子が整列し、水素結合が増加することがわかりました。

これにより、引き伸ばされたクモの糸は、未処理のものと比べて最大250%の強度向上を示し、さらに高い弾力性を持つようになったのです。

(A)シルクタンパク質のシミュレーション(B)タンパク質の両端に力を加えたシミュレーション(C)引き伸ばされた繊維に変形を加え、破断するまで伸ばした測定/Credit:Keten, S. et al., Science Advances (2025)

研究を主導したノースウェスタン大学のシナン・ケテン(Sinan Keten)教授は、クモの糸が引き伸ばされることで強くなることは以前から知られていたものの、その理由は解明されていなかったと述べています。

しかし、今回の研究では分子動力学法というコンピューターシミュレーション手法を用いて、ナノスケールで何が起きているのかを解析することで、引き伸ばしが糸の強度にどのように影響するのかを明らかにしました。

この発見は、人工クモ糸の製造プロセスを最適化し、より実用的な素材へと進化させる道を開くものです。

クモの糸が切り拓く未来—私たちの生活をどう変えるのか?

人工的に作られたクモの糸の繊維の電子顕微鏡画像/Credit:Washington University in St. Louis

今回の研究成果により、人工クモ糸の実用化が大きく前進しました。

この技術が確立されれば、医療分野では強靭で生体適合性のあるクモ糸が、外科用縫合糸や人工血管として活用される日が来るかもしれません。

また、防弾ベストや宇宙服の新素材としての利用も期待できます。

さらに、環境負荷の低減にも貢献できるでしょう。

クモの糸が未来の材料科学を変える日が、もうすぐそこまで来ているのかもしれません。

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参考文献

Stretching spider silk makes it strongerhttps://www.mccormick.northwestern.edu/news/articles/2025/03/stretching-spider-silk-makes-it-stronger/