インターネットとSNSの普及により、私たちはかつてないほどの情報に囲まれています。
しかし、そのすべてが真実とは限りません。
SNSの投稿、ネットニュース、動画コンテンツ、その中には誤った情報や、巧妙に仕組まれた偽情報が紛れ込んでいます。
こうした情報がもたらす影響は計り知れません。
新型コロナウイルスのワクチンに関するデマが広がったことで接種率が低下し、結果的に多くの命が危険にさらされたり、政治の世界でも、フェイクニュースが選挙結果を左右するほどの影響力を持つようになっています。
情報の信頼性が揺らぐと、社会そのものが不安定になり、人々の判断を誤らせてしまう可能性があります。
こうした問題に対処するため、これまでにさまざまな対策が考えられてきました。
例えば、SNSプラットフォームによる偽情報の削除や、ファクトチェック機関による検証などです。
しかし、こうした方法には課題もあります。
情報を削除する行為は表現の自由を侵害する可能性があり、ファクトチェックが追いつかないケースも少なくありません。
では、どうすれば偽情報の脅威から社会全体を守ることができるのでしょうか?
そこで注目されているのが、「情報に対する免疫力」をつけるための「心理的予防接種(inoculation theory)」という考え方です。
これは、ワクチンが病気に対する免疫を作るのと同じように、あらかじめ「弱めの偽情報」に触れることで、実際の偽情報に騙されにくくするという方法です。
しかし、従来の研究では、心理学的予防接種の効果が時間の経過とともに薄れてしまうことが指摘されていました。
では、どのようにすれば偽情報に対する耐性を長く維持できるのでしょうか?
この課題を解決するために考案されたのが、「心理学的ブースターショット」です。
この研究は、オックスフォード大学やケンブリッジ大学をはじめとする国際的な研究チームによって行われ、2025年3月に『Nature Communications』に掲載されています。