このヒト族はまだ完全に新種とは断定されておらず、正式な学名も付いていませんが、研究チームは現時点で「ホモ・アフィニス・エレクトス(Homo affinis erectus)」という名前で分類しています。

アフィニスとは「類似している」という意味であり、総じて「ホモ・エレクトスに類似したヒト族」を意味します。

ちなみに今回見つかったヒト族の個体は、歯の摩耗具合から成人に達していることがわかりましたが、具体的な年齢や性別までは特定できていません。

ホモ・アフィニス・エレクトスは西ヨーロッパにたどり着いた最初の人類である可能性がありますが、では彼らはどうやってスペインまで移動したのでしょうか?

どんなルートでスペインへ移動したのか?

研究者たちによると、そのルートには次の2つが可能性として挙げられるといいます。

1つはアフリカ北部からジブラルタル海峡を渡って、スペインのあるイベリア半島に辿り着くルート。

もう1つはアフリカ北部から中東のレバントを迂回して東ヨーロッパに入り、そこからイベリア半島へと西進するルート。

しかし研究者らは、海に隔てられたジブラルタル海峡を当時の技術で渡り切ることは困難なため、2つ目のルートを辿った可能性が高いと考えています。

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発掘作業の様子/ Credit: Maria D. Guillén / IPHES-CERCA

また、この時期のヨーロッパの気候は比較的温暖で、食料資源が豊富だった可能性があると研究者たちは見ています。

そのため、ホモ・アフィニス・エレクトスは狩りをしながらヨーロッパを移動し、イベリア半島を最終的な居住地とした可能性があります。

研究者たちは、今後さらに多くの化石を発掘し、この地域のヒト族の歴史をより詳しく解明する予定です。

特にホモ・アフィニス・エレクトスの性別やDNA解析を行うことで、さらに詳細な情報が得られるでしょう。

現代人の祖先がどのように世界に広がっていったのかを理解する上で、非常に重要な知見を与えてくれると期待されます。