反対方向を向いている政府と日銀
日銀が金融政策決定会合で、長期金利の1.0%超えを容認することを決めました。7月に続く長短金利操作(YCC)の修正で、市場関係者は「徐々に異次元金融緩和の出口に向かう」とみています。
朝日新聞に1面トップのそで見出しが「また緩和修正」でした。まずいことをしているような印象を与える。よくない見出しです。「修正」の繰り返しつつ日銀は出口に近づこうとしているというのが正しい解釈です。

黒田東彦前総裁と植田和男現総裁 NHKより
植田日銀総裁の発言の歯切れの悪さは今回も同様で、異次元緩和の段階的な軌道修正の意味を分かりにくくしています。アベノミクスによる大量国債の発行、それを可能にした日銀の異次元金融緩和の後始末が容易でなく、曖昧な言い方しかできないのでしょう。同情はします。
金融の正常化は「日銀の単独ではできない。財政の正常化と一体で取り組まないと進まない」と私は思っています。岸田政権は物価対策として、定額減税1人4万円、給付金1世帯7万円を打ち出しました。その他を含めると17兆円台の経済対策です。「国債を財源にしたばらまきが、またか」との批判が噴出しています。日銀と政府の歩調があっていない。あきれます。
独立財政機関を作り、政権、財務省とは中立の立場から、財政状態をチェックし、助言することが必要です。主要国の中で日本だけに存在しません。いつまでも政治の独走を許しておくわけにはいきません。
日銀はアベノミクスを含め長期にわたる金融緩和政策を検証するといっています。当事者の手による検証には自己弁護が入り込む。異次元緩和と財政膨張は一体化していますから、検証作業は独立財政機関のような第三者のよるべきです。
タイミングがいいことに、前任総裁の黒田東彦氏が日経の人気連載「私の履歴書(1か月)」に登場し、月末まで続きます。まだ評価の定まっていないというか、厳しい批判も噴出している経済人が退任後、1年も満たないのに「私の履歴書」に登場するのは珍しい。
本人も希望しての登場と、想像します。戦後経済史上、日銀史上、最悪最大の負の遺産を残したとへの批判に反論したい気持ちがあるのでしょう。自身が信奉するマネタリズム(貨幣数量説)を実践した結果をどうみているのか語ってほしい。弁明は聞きたくありません。
長期にわたるアベノミクスによっては、市場機能が封印され、そのこと自体が経済の自立性を奪ってしまったことをどう思うのか、異次元金融緩和からの脱出(出口)にどのような方法を想定していたのか、1ドル=150円の円安も響いて、日本経済の国際的な地位が急落し、GDPランキングでドイツに抜かれ、4位に転落したことなども前総裁として、虚心に語ってほしい。