しかし、それは教科書に書かれているようにインフレを煽る要因となる。それが爆発したのが1989年のインフレ3079%と1990年のインフレ2314%である。
ドル化を公約している大統領候補者このインフレを退治すると言って、ペソを廃止して米ドル化の実施を公約しているのが大統領決戦投票に臨むハビエル・ミレイ氏である。彼はドル化には2年の歳月が必要だとしている。
似たようなインフレ退治の対策は1991年4月から実施した。1ペソ=1ドルいうドルペッグ制である。それはシリアの移民2世のカルロス・メネム大統領の政権時であった。その成果があって1993年にはインフレは世界でも最も低い率まで下がった。
ところが、米国が金利を上昇させ、その影響でアジアやロシアでも通貨の切り上げが実施された。1999年にはアルゼンチンと最も貿易取引の多いブラジルまでが通貨の切り下げを実施。それに呼応してアルゼンチンも通貨の切り下げを実施すべきであったが、1ペソ=1ドルの固定レートを崩すことができないでいた。それが財政危機を招き、2002年にこの固定レート制を廃止したのである。その影響でペソは強度の下落。アルゼンチン人の3人に2人はこの影響で生活苦に陥った。その上デフォルトにも陥った。
ドルペッグ制はあたかもペニシリンで熱が上がるのを臨時に抑えたようなものであった。根本的に財政赤字などを解消させていない故に投薬を止めれば逆に抑えられていた熱が高熱となってインフレが高騰するという現象が出て来るということである。
ところが、今回ミレイ氏が提唱しているドル化は一時的なペッグ制ではなく、中央銀行を廃止して米ドルを法定通貨にするというプランである。
その場合に問題はペソをドルに交換するだけのドル通貨があるのかという疑問がある。ミレイ氏を囲む複数の経済学者は2年でドル化の実現は出来ると表明している。アルゼンチンが戦後インフレに犯されている慢性病から解放されるには法定通貨をドル化するしかないと彼らは表明している。米ドルを法定通貨としている国はパナマ、エクアドル、エルサルバドル、それに4つの小国である。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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